专利摘要:
方法および組成物が疼痛および嚢胞性線維症の治療のために提供される。当該方法は、動物に、治療的有効量の前立腺酸性ホスファターゼ(「PAP」)ポリペプチド、またはその活性な変異体、断片もしくは誘導体、あるいは、治療的有効量の活性増強PAP修飾因子を含む、組成物または医薬製剤を投与する工程を含む。PAPは、動物およびヒトにおける、神経因性疼痛および炎症痛を含む慢性疼痛のための治療として与えられる。当該PAP、またはその活性な変異体、断片もしくは誘導体、あるいは当該PAP活性増強修飾因子は、注入、髄腔内注入、経口投与、外科的な埋め込み型のポンプ、幹細胞、ウイルス遺伝子療法、またはネイキッドDNA遺伝子治療のうち1つ以上を介して投与される。PAPの髄腔内注入は、鎮痛薬として機能し、マウスにおける熱感受性を減少させる。PAPは、マウスにおける慢性的な機械的炎症痛および熱炎症痛を減少させることができる。神経損傷によるアロディニアおよび痛覚過敏は、脊髄におけるPAP活性を増加させることによって、防ぐことができる。
公开号:JP2011505337A
申请号:JP2010534050
申请日:2008-11-17
公开日:2011-02-24
发明作者:ピルッコ ヴィヒコ;マーク ズルカ
申请人:ピルッコ ヴィヒコ;ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒルThe University Of North Carolina At Chapel Hill;
IPC主号:A61K38-46
专利说明:

[0001] 本願は、2007年11月15日に出願された米国仮特許出願第61/003,205号の利益を主張するものである。その開示は、参照によりその全体が本願明細書に組み込まれる。]
[0002] 本願明細書において開示された主題は、疼痛の治療のための前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)組成物の使用に関する。]
背景技術

[0003] アメリカ人は、心臓疾患、糖尿病および癌の合計よりも多く疼痛を発症している。実際、約5000万人のアメリカ人が慢性疼痛に罹患し、治療のために1年あたり約1000億ドルを費やしている。残念なことに、最も強い入手可能な鎮痛薬の多くは、嗜癖、依存症ならびに心臓発作および脳卒中の増加したリスクを含む、深刻な副作用を有する。さらに、多くの慢性疼痛の症状は、現存する薬物療法によって効果的に治療できない。CELEBREX(登録商標)(2004年では28億ドル;G.D.Searle & Co.、米国、イリノイ州、スコーキー)およびVIOXX(登録商標)(2004年では14億ドル、Merck & Co.社、米国、ニュージャージー州、ホワイトハウス・ステーション)などの薬物の収益を考慮すると、慢性疼痛のための効果的な治療は、ヒトの健康に非常に役立つだろう。従って、効果的な疼痛治療について、未だ対処されていないニーズがある。]
課題を解決するための手段

[0004] いくつかの実施態様では、方法が、治療的有効量のPAP、またはその活性な断片、変異体もしくは誘導体、あるいは治療的有効量の活性増強PAP修飾因子を含む組成物または医薬製剤を投与することによって、動物における疼痛を治療するために提供される。いくつかの実施態様では、全てのタイプの疼痛(慢性疼痛、慢性炎症痛、神経因性疼痛、慢性神経因性疼痛、アロディニア、痛覚過敏、神経損傷、外傷、組織損傷、炎症、癌、ウイルス感染、帯状疱疹、糖尿病性神経障害、変形性関節症、熱傷、関節痛または腰痛、内臓痛、三叉神経痛、片頭痛、群発性頭痛、頭痛、線維筋痛症および分娩に関連する疼痛のうち1つ以上によって特徴付けられる疼痛を含むが、これらに限定されない)が治療される。]
[0005] いくつかの実施態様では、方法が、少なくとも一部がリゾホスファチジン酸の過剰によって特徴付けられる障害について動物を治療するために提供され、当該動物に治療的有効量のPAP、またはその活性な断片、変異体もしくは誘導体、あるいは治療的有効量の活性増強PAP修飾因子を含む組成物または医薬製剤を投与する工程を含む。]
[0006] いくつかの実施態様では、当該動物はヒトである。]
[0007] いくつかの実施態様では、当該PAPは、ヒト PAP、ウシPAP、ラットPAPおよびマウスPAP、ならびにそれらの活性な断片、変異体および誘導体からなる群から選択される。]
[0008] いくつかの実施態様では、当該PAPまたはその活性な断片、変異体もしくは誘導体は、下記のうち1つ以上からなる群から選択される1つ以上の修飾を含む:保存的アミノ酸置換;非天然アミノ酸置換、D−またはD,L−ラセミ混合物異性体型アミノ酸置換、アミノ酸化学置換、カルボキシ末端修飾またはアミノ末端修飾、生体適合性の分子(脂肪酸およびPEGを含む)への結合、および生体適合性の支持構造(アガロース、セファロースおよびナノ粒子を含む)への結合。]
[0009] いくつかの実施態様では、当該PAPは、組み換え法によって得られる。]
[0010] いくつかの実施態様では、当該PAPまたは当該PAPの活性増強修飾因子は、注入、経口投与、外科的な埋め込み型のポンプ、幹細胞、ウイルス遺伝子療法、ネイキッドDNA遺伝子治療のうちの1つ以上を介して投与される。いくつかの実施態様では、当該注入は、静脈内注入、硬膜外(epideral)注入、または髄腔内注入である。いくつかの実施態様では、当該投与は、PAPを発現している胚性幹細胞の髄腔内注入を介する。いくつかの実施態様では、当該投与は、3日に約1回の髄腔内注入による。いくつかの実施態様では、当該投与は、アデノシン、アデノシン一リン酸(AMP)またはAMP類似体のうち1つ以上と組み合わされる。いくつかの実施態様では、当該投与は、公知の鎮痛薬と組み合わされる。いくつかの実施態様では、公知の鎮痛薬はオピエートである。いくつかの実施態様では、当該投与は、PAPまたはその活性な変異体もしくは断片をコードする核酸配列を含む、レトロウイルス、アデノウイルスまたははアデノ随伴ウイルスのベクターの移入カセットを使用したウイルス遺伝子療法を介する。]
[0011] いくつかの実施態様では、方法が、動物における嚢胞性線維症を治療するために提供され、当該方法は、当該動物に、治療的有効量のPAP、またはその活性な断片、変異体もしくは誘導体、あるいは治療的有効量の活性増強PAP修飾因子を含む組成物または医薬製剤を投与する工程を含む。いくつかの実施態様では、当該投与は、肺中のエアロゾル化による。]
[0012] いくつかの実施態様では、方法が、少なくとも一部がアデノシンまたはアデノシン受容体の機能の欠損によって特徴付けられる障害を有する動物の肺におけるアデノシンのレベルを増加させるために提供され、当該方法は、当該動物に治療的有効量のPAP、またはその活性な断片、変異体もしくは誘導体、あるいは治療的有効量の活性増強PAP修飾因子を含む組成物または医薬製剤を投与する工程を含む。]
[0013] いくつかの実施態様では、単離されたPAPペプチドが提供される。当該ペプチドは、ヒト PAP、乳牛PAP、ラットPAPおよびマウスPAP、ならびにそれらの断片、変異体、および誘導体からなる群から選択することができる。いくつかの実施態様では、当該PAPペプチドをコードする単離されたヌクレオチド配列が提供される。いくつかの実施態様では、当該ヌクレオチド配列を含む発現ベクターが提供される。いくつかの実施態様では、当該発現ベクターを含む宿主細胞が提供される。いくつかの実施態様では、当該PAPまたはその活性な変異体もしくは断片をコードするヌクレオチド配列を含むレトロウイルス、アデノウイルスもしくはアデノ随伴ウイルスのベクターの移入カセットが提供される。]
[0014] いくつかの実施態様では、当該PAPペプチド、またはその活性な断片、変異体もしくは誘導体を含む組成物が提供され、当該組成物は、動物への投与のために、またはヒトへの投与のための医薬製剤として調製される。]
[0015] いくつかの実施態様では、方法が、候補小分子の存在下および不存在下でのPAPの活性を測定し、当該PAP活性の増加または減少を引き起こす候補小分子をPAP修飾因子として同定することによって、PAP活性の小分子修飾因子についてスクリーニングするために提供される。]
[0016] いくつかの実施態様では、キットが、治療的有効量のPAP、またはその活性な断片、変異体もしくは誘導体を含む組成物または医薬製剤、および局所組織へのPAPの送達のための外科的な埋め込み型のポンプ装置を含み、動物における疼痛の治療のために提供される。]
[0017] いくつかの実施態様では、方法は、痛み止めに対する個体の反応を診断するために提供され、当該個体のPAPゲノムの遺伝子座の中および周囲の1つ以上の一塩基多型(SNP)、挿入、欠損および/または他のタイプの遺伝的変異を同定する工程、ならびに当該SNP、挿入、欠損および/または他のタイプの遺伝的変異と、当該痛み止めに対する所定の反応とを関連付ける工程を含む。]
[0018] いくつかの実施態様では、方法は、疼痛についての個体の閾値を診断するために提供され、当該個体のPAPゲノムの遺伝子座の中および周囲の1つ以上の一塩基多型(SNP)挿入、欠損および/または他のタイプの遺伝的変異を同定する工程、ならびに、当該SNP、挿入、欠損および/または他のタイプの遺伝的変異と、疼痛についての所定の閾値とを関連付ける工程を含む。]
[0019] いくつかの実施態様では、方法は、急性疼痛から慢性疼痛への移行についての個体の傾向を診断するために提供され、当該個体のPAPゲノムの遺伝子座の中および周囲の1つ以上の一塩基多型(SNP)、挿入、欠損および/または他のタイプの遺伝的変異を同定する工程、ならびに当該SNP、挿入、欠損および/または他のタイプの遺伝的変異と、疼痛についての所定の閾値とを関連付ける工程を含む。]
[0020] いくつかの実施態様では、方法は、疼痛の薬物療法に対する個体の反応、疼痛についての閾値、または急性疼痛から慢性疼痛への移行に対する傾向を診断するために提供され、当該方法は、当該個体と対照集団とのPAP発現レベルにおける相違を関連付ける工程、および差次的な発現の程度と、疼痛の薬物療法に対する所定の反応、または疼痛についての所定の閾値とを関連付ける工程を含む。]
[0021] 従って、疼痛および嚢胞性線維症の治療のための方法および組成物を提供することが、本願明細書において開示された主題の目的である。これらの目的および他の目的は、本願明細書において開示された主題によって、全体または一部が達成される。]
[0022] 上記の本願明細書において開示された主題の目的、他の目的および利点は、以下の記載、図および実施例の検討によって明らかになるだろう。]
図面の簡単な説明

[0023] 前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)の分泌型および膜貫通型のアイソフォームを発現する細胞を示す模式図。PAPの触媒部位(活性部位)は、細胞外間隙および小胞内腔に位置する(図示せず)。SP=シグナルペプチド。TM=膜貫通領域。
各前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)アイソフォームの唯一の3’非翻訳領域に相補的(complimentary)なリボプローブによるin situハイブリダイゼーション実験からの顕微鏡写真。図2A(左側の顕微鏡写真)は、PAP膜貫通型アイソフォームが、マウス後根神経節(DRG)ニューロン中で高いレベルで発現していることを示す。図2B(右側の顕微鏡写真)は、分泌型アイソフォームが、検出不可能なレベルであるほどに低い発現であることを示す。スケールバー= 50μm。
酸性ホスファターゼ活性を定量化するための蛍光定量アッセイを示す一連の棒グラフ。左側の棒グラフ:シグマ(米国、ミズーリ州、セントルイス)から購入した純粋なウシ前立腺酸性ホスファターゼ(bPAP)タンパク質。右側の棒グラフ:形質移入された細胞可溶化物からアッセイされたマウス前立腺酸性ホスファターゼ(mPAP)。活性は、PAP阻害剤L−酒石酸塩(10mM)によって減少する。これらのアッセイは、製造者の手順に従って行われ(EnzChek Assay、インビトロジェン、米国、カリフォルニア州、カールズバッド)、蛍光マイクロプレートリーダーを使用して定量化された。
リゾホスファチジン酸(LPA)に誘起された情報伝達の、ウシ PAP(bPAP)の阻害を示すグラフ。Rat1細胞にカルシウム感受性の指標Fura2−AMを入れ、1.5時間、37℃でbPAPとインキュベーションされたLPAで刺激した(「a」の下のグラフの左側を参照)。洗い流しの後、この細胞は、1.5時間、37℃で(しかし、bPAPは入れずに)インキュベーションされたLPAで刺激された(「b」の下のグラフの右側を参照)。3つの独立した実験の平均的な割合は、+/−SEMで(グレーで)プロットされる。n=計60細胞が分析された。小さなエラーバーは、実験間の高度な再現性を強調する。
同一の視野において、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)−Venusで形質移入されたRat1細胞(薄い線)は、リゾホスファチジン酸(LPA)に誘起されたカルシウムの反応が、形質移入されていない細胞(濃い線)よりも小さいことを示すグラフ(15のPAP+および15の形質移入されていない細胞からの平均;これは2度再現された)。この効果は、(PAPと融合していない)Venusを形質移入された細胞においては見出されなかった。
前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)によるリゾホスファチジン酸(LPA)に誘起された情報伝達の阻害は、ホスファターゼ活性を必要とすることを示すグラフ。図6Aおよび図6C(それぞれ左側の上および下のグラフ)については、Rat1線維芽細胞は、野生型マウスPAP(mPAP)で形質移入された。図6Bおよび図6D(それぞれ、右側の上および下のグラフ)については、Rat1線維芽細胞は、ホスファターゼデッドの(phosphatase−dead)PAP変異体で形質移入された。形質移入後、細胞にカルシウム感受性の指標 Fura2−AMを入れ、LPAで刺激した。図6Aおよび図6Bは、形質移入されていない細胞またはPAPコンストラクトで形質移入された細胞におけるFura2の反応(Venus蛍光によって視覚化されている)を示す図である。図6Cおよび図6Dは、形質移入されていない細胞(影付きのバー)およびPAPコンストラクトで形質移入された細胞(白抜きのバー)についての、60秒のLPA刺激の間の曲線下面積の定量を示す棒グラフである。統計:独立t検定。図6Cおよび図6Dにおける絶対面積は、fura2について、異なる日における細胞のローディングディッシュ(loading dish)中の可変性によって異なることに注意。
末梢神経損傷がどのようにリゾホスファチジン酸(LPA)受容体の情報伝達に依存する神経因性疼痛を引き起こすかを示す模式図。前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)は、LPAを、モノグリセリド(MG)および無機リン酸(Pi)に脱リン酸化する。PAPは、損傷後に、後根神経節(DRG)ニューロンにおいて下方制御される。
神経因性疼痛行動を示すグラフ。図8A(グラフの左側)は、末梢神経への損傷が、惹起段階(Ini;影付きの濃灰色)の間にアロディニアおよび痛覚過敏を引き起こし、これは、維持段階(影付きの薄灰色)の間持続することを示す。図8B(中央のグラフ)は、神経損傷前の可溶性前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)の注入は、惹起を阻止できることを示す。図8C(グラフの右側)は、神経損傷後のPAPの注入が、維持段階の間、鎮痛性であることを示す。
神経因性疼痛は、リゾホスファチジン酸(LPA)ホスファターゼ活性の増加によって、治療できることを示す模式図。前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)はLPAを分解し、LPAに誘起された情報伝達を減少させる。いくつかの方法(a−d)が、侵害受容システムにおけるPAPを増加させるために存在する。
in vivoでのリゾホスファチジン酸(LPA)に誘起された感作の、ウシ前立腺酸性ホスファターゼ(bPAP)の阻害を示すグラフ。媒体の髄腔内注入前(ベースライン;BL)および媒体(黒色の実線)、20μU bPAP(黒色の点線)、1nmol LPA(灰色の点線)または1nmol LPA+20μU bPAP(灰色の実線)の髄腔内注入後の、野生型C57BL/6オスマウスの、機械的感受性(図10A、グラフの左側)および有害な熱感受性(図10B、グラフの右側)。全ての試料は、37℃で10分間、注入の前にインキュベーションされた。注入量:5μL。N=条件あたり5匹のマウス。エラーバー:+/−SEM。統計:媒体に対する独立t検定。p<0.05(*);p<0.005(**);p<0.0005(***)。
ウシ前立腺酸性ホスファターゼ(bPAP)およびヒト前立腺酸性ホスファターゼ(hPAP)が、in vivoにおいて鎮痛性であることを示すグラフ。媒体の髄腔内注入の前(ベースライン;BL)、および媒体(実線、図11Aおよび図11B)またはBSA(実線、図11Cおよび図11D)または20μU bPAP(点線、図11Aおよび図11B)または1.3mg/mL hPAP(点線、図11Cおよび図11D)の髄腔内注入後の、野生型C57BL/6 オスマウスの有害な熱感受性(図11Aおよび図11C)および機械的感受性(図11Bおよび図11D)。注入量:5μL。N=条件あたり5匹のマウス。エラーバー:±SEM。統計:媒体に対する独立t検定。p<0.05(*);p<0.005(**)。
組み換えALPの髄腔内注入の前(ベースライン;BL)および組み換えALPの髄腔内注入の後(矢印;5000U/mL;計25,000mU)の野生型C57BL/6 マウスの、有害な熱感受性(図12A)および機械的感受性(図12B)への、ウシアルカリホスファターゼ(ALP)の効果を示すグラフ。PAPおよびALPについてのユニット定義は、基本的に同じである(1Uは、1分間あたり、37℃で、それぞれpH 4.8またはpH 9.8で、1μmolの4−ニトロフェニルリン酸エステルを加水分解する)。従って、25,000mU ALPは、下記図13に示されたデータを与えるように使用された250mU hPAPよりも、100倍のホスファターゼ活性を有する。ベースライン値に対して、各時点の反応を比較するため、対応t検定が使用された。これらのアッセイにおけるいずれの時点においても有意差はなかった。全てのデータは、平均値±SEMとして示される(エラーバーのうちのいくつかは、サイズが小さいため、不明瞭である)。より低い濃度のALP(250mU、髄腔内)が使用された場合、熱感受性または機械的感受性を減少させないことも見出された(データは示されていない)。
活性なヒト前立腺酸性ホスファターゼ(hPAP、250mU)の髄腔内注入は、マウスにおける有害な熱刺激に対する鎮痛を引き起こすことを示すグラフ。増加した肢の退避潜時(paw withdrawal latency)は、鎮痛を示す。増加した肢の退避潜時は、不活性なhPAPで処置されたマウスにおいては認められない。野生型C57BL/6 オスマウスの熱感受性は、活性なhPAP(実線)または不活性なhPAP(点線)の髄腔内注入の前(ベースラインは、0日の時点である)および注入後6日間示される。注入量:5μL。N=条件あたり10匹のマウス。統計:不活性なhPAPに対する独立t検定。エラーバー:+/−SEM。
ヒト前立腺酸性ホスファターゼ(hPAP)の髄腔内注入の用量依存性を示すグラフ。1番上のグラフ(図14A)は、放射熱源に対する肢の退避潜時への、不活性なhPAP(影付きの円)、または、増加した量(0.25mU、影付きの四角;2.5mU、影付きの三角;25mU、濃い円;または250mU、濃い四角)の活性なhPAPの髄腔内注入の用量依存性を示す。図14Bは、不活性なPAPを注入したマウスに対する、曲線下面積(AUC;単位は潜時(秒)×注入後の時間(時間)である;注入後72時間(3日間)について積分した)としてプロットされた、同様のデータを示す。図14Bの挿入図は、対数目盛でプロットされたデータである。図14Cは、ベースライン(BL)に対する、肢の退避潜時の最大の%増加としてプロットされた2日間の時点からのデータのグラフである。図14Cの挿入図は、対数目盛上にプロットされた2日間の時点のデータである。注入量:5μL。0.25mU、2.5mU、および25mUの量について、N=8の野生型C57BL/6 オスマウス;不活性なhPAPおよび250mUの量について、N=24−74の野生型C57BL/6 オスマウス。曲線は、Prism 5.0(GraphPad(商標)Software社、米国、カリフォルニア州、ラ・ホーヤ)を使用して、非線形回帰分析によって作成された。エラーバー:+/−SEM。有意差は、ベースラインと比較して示される(対応t検定);*P<0.05;**P<0.005;***P<0.0005。
マウスにおける機械的感受性は、活性なヒト前立腺酸性ホスファターゼ(hPAP、250mU)の髄腔内注入による治療後に変化しないことを示すグラフ。野生型C57BL/6 オスマウスの熱感受性は、活性なhPAP(実線)または不活性なhPAP(点線)の髄腔内注入の前(ベースラインは、0日の時点である)および注入後6日間示される。注入量:5μL。N=条件あたり10匹のマウス。いずれの時点においても有意差はなかった。エラーバー:+/−SEM。
髄腔内硫酸モルヒネの用量依存性の抗侵害受容性効果を示すグラフ。1番上のグラフ(図16A)は、放射熱源に対する肢の退避潜時への、媒体(影付きの円)または増加した量(0.01μg、濃い四角;0.1μg、三角;1μg、円;10μg、影付きの四角;50μg、濃い円)の硫酸モルヒネの髄腔内注入(モルヒネ/V−矢印)の用量依存性を示す。2つの最も高い用量で副作用が認められた。10μgの用量で、3匹のマウスが麻痺し、ストラウブ挙尾を示し、3−5時間続いた。50μgの用量で、2匹のマウスが死亡し、一方、3匹の他のマウスは麻痺し、ストラウブ挙尾を示し、1−2時間続いた。ストラウブ挙尾は、水平より上方に保持された硬直した尾として視覚化される(HyldenおよびWilcox、1980)。高用量の髄腔内モルヒネは、運動障害および致死をもたらすことが知られる(DirigおよびYaksh、1995;Grantら、1995;Nishiyamaら、2000)。図16Bは、媒体を注入されたマウスに対する、曲線下面積(AUC;単位は、潜時(秒)×注入後の時間(時間)である;全時間経過について積分した)としてプロットされた同様のデータを示す。図16Bの挿入図は、対数目盛でプロットされたデータを示す。図16Cは、ベースライン(BL)に対する、肢の退避潜時における最大の%増加としてプロットされた1時間の時点からのデータを示す。図16Cの挿入図は、対数目盛上にプロットされた、1時間の時点のデータを示す。注入(髄腔内)量は、5μLだった。n=8の野生型マウスが用量あたり使用された。曲線は、Prism 5.0(GraphPad(商標)Software社、米国、カリフォルニア州、ラ・ホーヤ)を使用して、非線形回帰分析によって作成された。有意差は、ベースラインと比較して示される(対応t検定);*P<0.05;**P<0.005;***P<0.0005。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。
ウシ前立腺酸性ホスファターゼ(bPAP)が、マウスの炎症痛の完全フロイントアジュバント(CFA)モデルにおいて鎮痛性であることを示すグラフ。野生型C57BL/6 オスマウスの有害な熱感受性(図17A)および機械的感受性(図17B)は、後肢へのCFAの注入の前(ベースライン;BL)、1日後、およびBSA(実線)または20μU bPAP(点線)の髄腔内注入後に示される。注入量:5μL。N=条件あたり5匹のマウス。エラーバー:±SEM。統計:媒体に対する独立t検定。p<0.05(*)。
ヒト前立腺酸性ホスファターゼ(hPAP)は、マウスの炎症痛の完全フロイントアジュバント(CFA)モデルにおいて鎮痛性であることを示すグラフ。CFAを注入された(または注入されていない)、野生型C57BL/6 オスマウスの後肢の熱感受性は、活性なhPAP(注入された肢、太い実線;注入されていない肢、薄い実線)または不活性なhPAP(注入された肢、太い点線;注入されていない肢、薄い点線)のいずれかの髄腔内注入後に示される。活性なhPAPは、不活性なhPAPと比較して、CFAで処置された肢および処置されていない肢の両方の熱感受性を減少させる。
ヒト前立腺酸性ホスファターゼ(hPAP)が、マウスの炎症痛の完全フロイントアジュバント(CFA)モデルにおいて鎮痛性であることを示すグラフ。CFAを注入された(または注入されていない)、野生型C57BL/6 オスマウスの後肢の機械的感受性は、活性なhPAP(注入された肢、太い実線;注入されていない肢、薄い実線)または不活性なhPAP(注入された肢、太い点線;注入されていない肢、薄い点線)のいずれかの髄腔内注入後に示される。活性なhPAPは、CFAを注入された肢のみにおいて、不活性なPAPと比較して、機械的感受性を減少させる。N=10のマウスが試験された。
ウシ前立腺酸性ホスファターゼ(bPAP)が、マウスの神経因性疼痛の神経部分損傷(SNI)モデルにおいて鎮痛性であることを示すグラフ。野生型C57BL/6 オスマウスの損傷した後肢(左肢、影付きの四角)または損傷していない後肢(右肢、白抜きのダイアモンド)の有害な熱感受性は、活性なbPAPの髄腔内注入後に示される。熱感受性の減少は、bPAP注入から約3日間後の損傷した肢および損傷していない肢の両方について認められた。N=7のマウスが試験された。
ウシ前立腺酸性ホスファターゼ(bPAP)は、マウスの神経因性疼痛の神経部分損傷(SNI)モデルにおいて鎮痛性であることを示すグラフ。野生型C57BL/6 オスマウスの損傷した左後肢(影付きの四角)または損傷していない右後肢(白抜きのダイアモンド)の機械的感受性は、活性なbPAPの髄腔内注入後に示される。機械的感受性の減少は、bPAP注入から約3日間後に、損傷した肢については認められたが、損傷していない肢については認められなかった。N=7のマウスが試験された。
ヒト前立腺酸性ホスファターゼ(hPAP)は、マウスの神経因性疼痛の神経部分損傷(SNI)モデルにおいて鎮痛性であることを示すグラフ。野生型C57BL/6 オスマウスの損傷した後肢および損傷していない後肢の熱感受性は、活性なhPAP(損傷した肢、影付きの四角;損傷していない肢、白抜きの四角)または不活性なhPAP(損傷した肢、影付きの三角;損傷していない肢、白抜きの三角)の髄腔内注入後に示される。熱感受性の減少は、活性なhPAP注入から約3日間後に、損傷した肢および損傷していない肢の両方で認められた。
ヒト前立腺酸性ホスファターゼ(hPAP)は、マウスの神経因性疼痛の神経部分損傷(SNI)モデルにおいて鎮痛性であることを示すグラフ。野生型C57BL/6 オスマウスの損傷した後肢および損傷していない後肢の機械的感受性は、活性なhPAP(損傷した肢、影付きの四角;損傷していない肢、白抜きの四角)または不活性なhPAP(損傷した肢、影付きの三角;損傷していない肢、白抜きの三角)の髄腔内注入後に示される。機械的感受性の減少は、活性なhPAP注入から約3日間後に、損傷した肢については認められたが、損傷していない肢については認められなかった。
PAP−/− マウスは、炎症痛の完全フロイントアジュバント(CFA)モデル(図24Aおよび図24B)、および神経因性疼痛の神経部分損傷(SNI)モデル(図24Cおよび図24D)において、増強された侵害受容反応を呈することを示すグラフ。野生型マウスおよびPAP−/− マウスは、1本の後肢へのCFAの注入(CFA−矢印)の前(ベースライン、BL)および後(野生型マウス、白抜きの円;PAP−/− マウス、濃い四角)に、放射熱源を使用して熱感受性(図24A)、および電気的von Freyセミフレキシブルチップを使用して機械的感受性(図24B)について試験された。非炎症の後肢(野生型マウス、灰色の円;PAP−/− マウス、灰色の四角)は、対照としての役割を果たす。SNI モデルについては、坐骨神経の腓腹腓骨枝および総腓骨枝は、結紮され、次いで、切除された(損傷−矢印)。損傷した後肢(野生型マウス、白抜きの円;PAP−/− マウス、濃い四角)および損傷していない後肢(対照;野生型マウス、灰色の円;PAP−/− マウス、灰色の四角)は、熱感受性(図24C)および機械的感受性(図24D)について試験された。対応t検定は、各時点で、野生型マウス(n=10)とPAP−/− マウス(n=10)との間で、反応を比較するために使用された;同じ肢の比較。*P<0.05;**P<0.005;***P<0.0005。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。
PAP−/− マウスにおける脊髄内前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)の侵害受容性効果、およびPAP−/− マウスにおける慢性炎症痛の行動表現型のPAPレスキューを示すグラフ。野生型マウス(WT)およびPAP−/−(PAP KO)マウスは、1本の後肢(すなわち、左後肢)への完全フロイントアジュバントの注入(CFA−矢印)の前(ベースライン、BL)および後に、熱感受性(図25A)について試験された。非炎症の(右)後肢は、対照としての役割を果たす。1日後、野生型マウスおよびPAP−/− マウスの半数は、活性なヒト PAP(hPAP−矢印;250mU、髄腔内)を注入され、一方、残りの半分は、不活性なhPAPを注入された。これらの、不活性なhPAPを注入されたマウスからのデータは、上記図24Aにおいて示された。図25Aでは、野生型の対照の肢についてのデータが薄い影付きの円で示され、野生型の炎症した肢については濃い影付きの円で、活性なhPAPを投与した野生型の対照の肢については薄い影付きの三角で、活性なhPAPを投与した野生型の炎症した肢については影付きでない三角で、PAP KOの対照の肢については薄い影付きの四角で、PAP KOの炎症した肢については濃い影付きの四角で、活性なPAPを投与したPAP KOの対照の肢については薄い影付きのダイアモンドで、活性なPAPを投与したPAP KOの炎症した肢については影付きでないダイアモンドで示される。対応t検定は、各時点で、野生型マウス(n=10/群)とPAP−/− マウス(n=10/群)との間で、反応を比較するために使用された;同じ肢の比較(n=40匹のマウスがこの実験のために使用された)。*P<0.05;**P<0.005;***P<0.0005。全てのデータは、平均値±平均値の標準誤差として示される。
PAP−/− マウスにおける脊髄内前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)の侵害受容性効果、およびPAP−/− マウスにおける慢性炎症痛の行動表現型のPAPレスキューを示すグラフ。野生型マウス(WT)およびPAP−/−(PAP KO)マウスは、1本の後肢(すなわち、左後肢)への完全フロイントアジュバントの注入(CFA−矢印)の前(ベースライン、BL)および後に、機械的感受性(図25B)について試験された。非炎症の(右)後肢は、対照としての役割を果たす。1日後、野生型マウスおよびPAP−/− マウスの半数は、活性なヒト PAP(hPAP−矢印;250mU、髄腔内)を注入され、一方、残りの半分は、不活性なhPAPを注入された。これらの、不活性なhPAPを注入されたマウスからのデータは、図24Bにおいて示された。図25Bでは、野生型の対照の肢についてのデータが薄い影付きの円で示され、野生型の炎症した肢については影付きでない円で、活性なhPAPを投与した野生型の対照の肢については濃い影付きのダイアモンドで、活性なhPAPを投与した野生型の炎症した肢については影付きでないダイアモンドで、PAP KOの対照の肢については影付きでない四角で、PAP KOの炎症した肢については濃い影付きの四角で、活性なPAPを投与したPAP KOの対照の肢については薄い影付きの三角で、活性なPAPを投与したPAP KOの炎症した肢については影付きでない三角で示される。対応t検定は、各時点で、野生型マウス(n=10/群)とPAP−/− マウス(n=10/群)との間の反応を比較するために使用された;同じ肢の比較(n=40匹のマウスがこの実験のために使用された)。*P<0.05;**P<0.005;***P<0.0005。全てのデータは、平均値±平均値の標準誤差として示される。
細胞および侵害受容性回路(nociceptive circuit)中での、in vitroで、アデノシンへのアデノシン一リン酸(AMP)の脱リン酸化によって明らかとなった、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)エクト−5’−ヌクレオチダーゼ活性に関連するデータを示す。図26Aは、アデノシン濃度の増加によって測定された、1mM AMP、アデノシン二リン酸(ADP)、またはアデノシン三リン酸(ATP)への、ヒト前立腺酸性ホスファターゼ(hPAP、2.5U/mL)の効果を示すグラフである。脱リン酸化反応(時点あたりn=3)は、示された時点での熱変性によって停止された。アデノシンへのヌクレオチドの変換は、高性能液体クロマトグラフ(HPLC)によって測定された。データは、平均値±SEMとして示される。図26Bは、1mM AMPとヒト前立腺酸性ホスファターゼ(hPAP)とのインキュベーションの前(t=0)および後(t=240分)のHPLCクロマトグラムを示す。アデノシン(ado)およびAMPに対応するピークが示される。任意の単位(a.u.)。図26Cおよび図26Dは、マウス膜貫通型PAP(TM−PAP)発現コンストラクト(図26C)、または空のpcDNA3.1ベクター(図26D)で形質移入され、次いで、AMP組織化学を使用して染色されたHEK 293細胞を示す顕微鏡写真である。細胞膜は透過処理されなかったため、細胞外ホスファターゼ活性をアッセイすることができた。同一の結果が、各遺伝子型の5匹のさらなるマウスから得られた。AMP(図26Cおよび図26Dにおいては6mMである)が基質として使用され、バッファーのpHは5.6だった。スケールバー:図26C−図26Dにおいては50μmである。
細胞および侵害受容性回路(nociceptive circuit)中での、in vitroで、アデノシンへのアデノシン一リン酸(AMP)の脱リン酸化によって明らかとなった、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)エクト−5’−ヌクレオチダーゼ活性に関連するデータを示す。図26E−図26Hは、AMP組織化学を使用して染色された、野生型(図26Eおよび図26G)およびPAP−/−(図26Fおよび図26H)成体マウスからの、腰後根神経節(DRG;図26Eおよび図26H)および脊髄(図26G−26H)を示す顕微鏡写真である。野生型およびPAP−/−の脊髄の前角における運動神経もまた、染色された。同一の結果が、各遺伝子型の5匹のさらなるマウスから得られた。AMP(図26E−図26Hにおいては0.3mMである)が基質として使用され、バッファーのpHは5.6だった。スケールバー:図26E−図26Fにおいては50μmである;図26Gおよび図26Hにおいては500μmである。
前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)が、抗侵害受容のためにA1−アデノシン受容体を必要とすることを示すグラフ。野生型のマウス(白抜きの円)およびA1R−/− マウス(濃い四角)は、ヒト前立腺酸性ホスファターゼの髄腔内注入(hPAP−矢印)の前(ベースライン、BL)および後に、熱感受性(図27A)および機械的感受性(図27B)について試験された。完全フロイントアジュバント(CFA)が、野生型マウスおよびA1R−/− マウスの1本の後肢へ注入された(CFA−矢印)。活性な、または不活性なヒト前立腺酸性ホスファターゼ(hPAP)が、1日後(hPAP−矢印)に、髄腔内に注入された。炎症した後肢(野生型マウス、白抜きの円;A1R−/− マウス、濃い四角)および非炎症の後肢(対照;野生型マウス、影付きの円;A1R−/− マウス、影付きの四角)が、熱感受性(図27C)および機械的感受性(図27D)について試験された。神経部分(SNI)モデルが、野生型マウスおよびA1R−/− マウスにおいて神経因性疼痛(損傷−矢印)を引き起こすために使用された。活性な、または不活性なhPAPが、4日後に髄腔内に注入された(hPAP−矢印)。損傷した後肢(野生型マウス、白抜きの円;A1R−/− マウス、濃い四角)および損傷していない後肢(対照;野生型マウス、影付きの円;A1R−/− マウス、影付きの四角)が、熱感受性(図27E)および機械的感受性(図27F)について試験された。全ての実験について、マウスあたり250mUのhPAPが注入された。t検定が、野生型マウス(n=10)とA1R−/− マウス(n=9)との間で、各時点で反応を比較するために使用された;同じ肢の比較。*P<0.05;**P<0.005;***P<0.0005。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。
A1−アデノシン受容体(A1R)が、ウシ 前立腺酸性ホスファターゼ(bPAP)の抗侵害受容のために必要とされることを示すグラフ。野生型マウス(白抜きの円、n=7)およびA1R−/− マウス(濃い四角、n=7)が、活性なbPAPの髄腔内注入(0.3U/mL;矢印)の前(ベースライン、BL)および後に、熱感受性(図28A)および機械的感受性(図28B)について試験された。対応t検定が、野生型マウスとノックアウトマウスとの間で、反応を各時点で比較するために使用された。有意差は、下記のように示される;*P<0.05;**P<0.005;***P<0.0005。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。
前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)の抗侵害受容性効果は、選択的 A1−アデノシン受容体(A1R)拮抗薬で、一過性に阻害できることを示すグラフ。野生型マウスは、1本の後肢(炎症した肢、白抜きの円または濃い四角)への、完全フロイントアジュバントの注入(CFA−矢印)の前(ベースライン、BL)および後に、有害な熱感受性(図29A)および機械的感受性(図29B)について試験された。非炎症の後肢は、対照としての役割を果たした(影付きの円または四角)。全てのマウスは、活性なhPAPを注入された(hPAP−矢印;250mU、髄腔内)。2日後に、マウスの半数は媒体(CPX/V−矢印、円;腹腔内(i.p.);行動測定の1時間前)を注入され、一方、残りの半分は、8−シクロペンチル−1,3−ジプロピルキサンチンを注入された(CPX/V−矢印、四角;1mg/kg 腹腔内;行動測定の1時間前)。CPXは、hPAPの全ての抗侵害受容性効果に一過性に拮抗した。対照的に、CPXは、9日目(hPAPの抗侵害受容性効果がなくなった4日後)に注入された場合、熱感受性または機械的感受性に影響しなかった。対応t検定は、媒体を注入されたマウス(n=10)と、CPXを注入されたマウス(n=10)との間で、反応を各時点で比較するために使用された;同じ肢の比較。***P<0.0005。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。
髄腔内 N6−シクロペンチルアデノシン(CPA)(選択的 A1−アデノシン受容体(A1R)作動薬)の用量依存性の抗侵害受容性効果を示すグラフ。図30Aは、放射熱源への肢の退避潜時に対する、媒体または増加した用量(0.0005nmol−5nmol)のCPAの(髄腔内)注入(CPA/V−矢印)の効果を示す。2つの最も高い用量のCPAを注入されたほとんど全てのマウスは、1時間続いた前肢および後肢の麻痺によって、20秒のカットオフに達した(囲まれた領域)。高用量のアデノシン受容体作動薬は、運動麻痺を引き起こすことが知られる(Sawynok、2006)。図20Bは、媒体を注入されたマウスに対する、曲線下面積(AUC;単位は、潜時(秒)×注入後の時間(時間)である;全時間経過にわたって積分した)としてプロットされた図30Aと同様のデータを示す。図30Bの挿入図は、対数目盛でプロットされたデータを示す。図30Cは、ベースライン(BL)に対する、肢の退避潜時における最大の%増加としてプロットされた、1時間の時点からのデータを示す。図30Cの挿入図は、対数目盛上にプロットされた1時間の時点からのデータを示す。(髄腔内)注入量は5μLだった。用量あたり、n=8の野生型マウスが使用された。全てのデータは、平均値±平均値の標準誤差として示される。曲線は、Prism 5.0(GraphPad(商標)Software社、米国、カリフォルニア州、ラ・ホーヤ)を使用して、非線形回帰分析によって作成された。有意差は、ベースラインに対して示される(対応t検定);*P<0.05;**P<0.005;***P<0.0005。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。] 図10A 図10B 図11A 図11B 図11C 図11D 図12A 図12B 図13 図14A
[0024] 本願明細書において開示された主題に従って、方法および組成物が、疼痛および嚢胞性線維症の治療のために提供される。いくつかの実施態様では、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)と呼ばれるタンパク質が、これらの障害の治療のために提供される。PAPタンパク質は、髄腔内に(脊髄へ)注入される場合、動物モデルにおける慢性炎症痛および神経因性疼痛の治療に非常に効果的である。PAPタンパク質の単回注入は、最大3日間の鎮痛を生じさせることができる。疼痛を3日間軽減する、このような単回投与は、現存する疼痛治療を大いに改善する。]
[0025] (I.定義)
下記の用語は、当業者によってよく理解されると考えられるが、下記の定義は、本願明細書において開示された主題の説明を容易にするために記載される。]
[0026] 長年の特許法の慣習に従い、語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、本願(請求項を含む)において使用される場合、「1つ以上の」を意味する。]
[0027] 特段の記載がない限り、本願明細書および請求項で使用される成分の量、反応条件などを表す全ての数字は、語「約」によって、全ての例において、改変されるものとして理解されるものとする。従って、異なる記載がない限り、本願明細書および請求項に記載されるパラメータの数値幅は、本願明細書において開示された主題によって得ようとする所望の特性に応じて、変化する可能性がある近似値である。]
[0028] 本願明細書で使用される用語「動物」は、特定の治療のレシピエントとなるヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類などを含む(しかしこれらに限定されない)、全ての動物(例えば、1の動物)を指す。]
[0029] 「アミノ酸配列」ならびに「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」などの用語は、本願明細書において互換的に使用され、当該アミノ酸配列を、言及されるタンパク質分子に関連する、完全な、天然のアミノ酸配列(すなわち、自然に生じるタンパク質中で見出されるアミノ酸のみを含む配列)に限定することは意図されていない。本願明細書において開示された主題のタンパク質およびタンパク質の断片は、組み換え法によって産生することができ、または、自然に存在する供給源から単離することができる。]
[0030] 同様に、本願明細書において開示された全ての遺伝子、遺伝子の名称、および遺伝子産物は、本願明細書において開示された組成物および方法を利用できる全ての種からの相同体に対応することが意図される。従って、当該用語は、ヒトおよびマウスからの遺伝子および遺伝子産物を含むが、これらに限定されない。特定の種からの遺伝子または遺伝子産物が開示された場合、この開示は例示のみが意図され、それが現れる文脈が明白に示していない限り、制限的に解釈されないものとすることが理解される。従って、例えば、本願明細書において開示された遺伝子については、いくつかの実施態様では、ジェンバンク(登録商標)受入番号に基づく哺乳類の核酸およびアミノ酸配列に関連し、他の動物(他の哺乳類、魚類、両性類、爬虫類、および鳥類を含むが、これらに限定されない)からの相同の、かつ/またはオルソロガスな遺伝子および遺伝子産物を含むように意図される。]
[0031] 用語「LPA」は、リゾホスファチジン酸の略である。]
[0032] PAPの「修飾因子」は、PAP触媒活性を調節できる小分子を指している。PAP修飾因子は、PAP活性の活性化剤または阻害剤のいずれかであってもよい。]
[0033] 用語「PAP」は、前立腺酸性ホスファターゼ(E.C.3.1.3.2.)活性を有するタンパク質を意味する。用語「ACPP」(すなわち、前立腺酸性ホスファターゼ)は、本願明細書において、「PAP」と互換的に使用される。ジェンバンク(登録商標)データベースは、様々な種からのPAPのアミノ酸および核酸配列を開示し、これらのうちいくつかは、下記表1に要約される。]
[0034] ]
[0035] 「組み換え発現カセット」または単に「発現カセット」は、細胞中の特定の核酸の転写を可能にする核酸成分で組み換え的または合成的に産生された、核酸コンストラクトである。当該組み換え発現カセットは、プラスミド、ウイルス、または他のベクターの一部であってもよい。典型的に、当該組み換え発現カセットとしては、転写される核酸、プロモーター、および/または他の制御配列が挙げられる。いくつかの実施態様では、当該発現カセットはまた、例えば、複製開始点、および/または、染色体組み込み因子(例えば、レトロウイルスLTR)も含む。]
[0036] 「レトロウイルス」は、逆転写酵素およびレトロウイルスのビリオンを介して増殖する、1本鎖の、2倍体のRNAウイルスである。レトロウイルスは、複製可能、または複製不可能である可能性がある。用語「レトロウイルス」は、いずれかの公知のレトロウイルス(例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、ネコ白血病ウイルス(FLV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV)などのc型 レトロウイルス)を指す。本願明細書において開示された主題の「レトロウイルス」としてはまた、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV−1およびHTLV−2)、およびレトロウイルスのレンチウイルスファミリー(ヒト免疫不全ウイルスHIV−1およびHIV−2、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ならびにウマ免疫不全ウイルス(EIV)など、しかしこれらに限定されない)が挙げられる。]
[0037] 本願明細書におけるいくつかの用語は、互換的に使用できる。従って、「ビリオン」、「ウイルス」、「ウイルス粒子」、「ウイルスベクター」、「ウイルスのコンストラクト」、「ベクター粒子」、「ウイルスベクター移入カセット」および「シャトルベクター」は、核酸を、ウイルス様侵入機構を通じて細胞中に導入できるウイルスおよびウイルス様粒子を指す可能性がある。このようなベクター粒子は、特定の条件下で、これが感染する細胞への、遺伝子の導入を媒介することができる。このような細胞は、本願明細書において、「標的細胞」と命名される。当該ベクター粒子が、これが感染する細胞へ遺伝子を導入するために使用される場合、このようなベクター粒子は、「遺伝子送達媒体」または「送達媒体」とも命名される。レトロウイルスベクターは、ウイルスの感染工程を利用することによって、効率的に遺伝子を導入するために使用されている。レトロウイルスゲノムにクローン化された外来遺伝子は、レトロウイルスによる感染または導入に対して感受性の高い細胞へ、効率的に送達できる。他の遺伝子操作を通じて、当該レトロウイルスゲノムの複製能を破壊できる。ベクターは、新たな遺伝物質を細胞に導入するが、増殖することはできない。]
[0038] (II.前立腺酸性ホスファターゼ(PAP))
PAPは、ヒスチジン酸性ホスファターゼスーパーファミリーのメンバーである。ヒスチジン酸性ホスファターゼは、活性部位内に位置する、高度に保存された、RHGXRXP(配列番号:1)モチーフを含む。PAPは、例えば、熱変性を含む方法、および当該タンパク質と、ジエチルピロカーボネート(DEPC)とのインキュベート(これは、全てのヒスチジン残基を化学的に修飾する)、または、活性部位のヒスチジン残基(His12)のアラニンへの変異(McTigueおよびVan Etten、1978;Ostaninら、1994)によって、触媒的に不活性にすることができる。その名称が意味する通り、PAPは、主に前立腺で発現するが、本願明細書において開示された主題は、PAPがまた、高いレベルで、小径DRGニューロンにおいて発現することを示す(実施例3−5、図1および図2A)。PAPは、分泌型(可溶性)タンパク質、または触媒性ホスファターゼ領域が細胞外に位置する、1型膜貫通型(TM)タンパク質のいずれかとして発現する(図1)。分泌型は、広範に研究されてきており、前立腺癌についての、血液の診断マーカーとして使用される(OstrowskiおよびKuciel、1994;Roikoら、1990)。] 図1 図2A
[0039] フッ化物抵抗性酸性ホスファターゼ(FRAP)は、多くの小径後根神経節(DRG)ニューロンの、従来からの組織化学的マーカーであり、疼痛の機構と関連する。FRAPの分子同一性(molecular identity)は、未知だった。遺伝的アプローチを使用し、本願明細書において開示された主題は、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP、EC 3.1.3.2)の膜貫通型アイソフォームは、FRAPであることを示す。マウスおよびヒトの、疼痛感受性の、ペプチド作動性および非ペプチド作動性の侵害受容性ニューロンは、PAPを発現しており、疼痛におけるPAPについての予期しない役割を示唆する(実施例3−5)。]
[0040] PAPおよびFRAPは、多くの特徴を共通して有する。例えば、FRAPは、電子顕微鏡観察によると、細胞膜、ゴルジおよび小胞体に局在化しており、特に、DRGニューロンのシナプス前膜の付近に多い(CsillikおよびKnyihar−Csillik、1986;Knyihar−Csillikら、1986;KnyiharおよびGerebtzoff、1970)。これらの超微細構造的なデータは、膜貫通型PAPが、DRGにおける主なアイソフォームであるという事実と一致している(実施例3−5)。PAPおよびFRAPはまた、両方とも、L−酒石酸塩によって、可逆的に阻害される(図3;実施例6)。PAPおよびFRAPは、両方とも、坐骨神経の切除後に、侵害受容回路(nociceptive circuit)において下方制御される(Costiganら、2002;CsillikおよびKnyihar−Csillik、1986;実施例3;表2)。PAPおよびFRAPは、酸性ホスファターゼとして分類される。しかし、これらは両方とも、酸性(pH 5)および中性のpHで触媒的に活性である。PAPおよびFRAPは、ホスホリル−o−チロシン、ホスホリル−o−セリン、パラ−ニトロフェニルリン酸エステル(p−NPP)、チアミン一リン酸およびヌクレオチド(特に、ヌクレオチド一リン酸エステル(アデノシン一リン酸;AMPなど))を含む、同じ基質を脱リン酸化する(OstrowskiおよびKuciel、1994;SilvermanおよびKruger、1988a)。] 図3
[0041] いくつかのグループはまた、PAPが、リゾホスファチジン酸(LPA)を、モノグリセリド(MG)および無機リン酸に脱リン酸化することを見出した(図7)(HiroyamaおよびTakenawa、1999;Tanakaら、2004)。実際、過剰発現によって増加するPAPレベルは、前立腺癌細胞の増殖の減少を引き起こした(Linら、1994)。減少した増殖は、PAPが、LPAを不活性化させ、その分裂促進効果を遮断するという事実に起因する可能性がある(Tanakaら、2004)。この仮説の裏付けとして、PAP−/−マウスにおけるPAP活性の減少は、前立腺細胞の過剰増殖をもたらす(Vihko、未発表)。] 図7
[0042] リゾホスファチジン酸(LPA)は、多くの生物学的過程(増殖、分化、生存、および疼痛を含む)を制御する強力なリゾリン脂質媒介物である(Brindleyら、2002;Inoueら、2004;Moolenaar、2003;Moolenaarら、2004;Tigyiら、1994)。LPAは、傷を負った場合に、血小板ならびにニューロンおよび他の細胞から放出される(Eichholtzら、1993;Sugiuraら、1999;Xieら、2002)。]
[0043] LPA1、LPA2、LPA3およびLPA4と呼ばれる、4つのよく特徴付けられたLPA受容体がある(AnlikerおよびChun、2004;Noguchiら、2003;Takuwaら、2002)。これらの受容体は、多様な下流の情報伝達分子に結合し、全身の多くの細胞で発現する。LPA1およびLPA3はまた、DRGニューロンで発現する(実施例5を参照;Inoueら、2004;Renbackら、2000)。さらに、Leeらは、LPA5と呼ばれる5番目のLPA受容体を発見し、これもDRGで発現することを示した(Leeら、2006)。LPA受容体の活性化は、カルシウムイメージング、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路の活性化、Elk1の転写活性化、およびRhoA/ROCK経路の活性化を使用してルーチン的に測定される(MillsおよびMoolenaar、2003)。LPA受容体の情報伝達は、受容体の脱感作、またはLPAの脱リン酸化(分解)のいずれかによって終わる。現在、細胞外でLPAを脱リン酸化するいくつかの公知のホスファターゼがある:1)PAP;2)リゾホスファチジン酸性ホスファターゼ(LPAP;ACP6としても知られる);および3)脂質リン酸ホスファターゼ 1〜3(LPP1〜3)(ホスファチジン酸ホスファターゼ2A〜C型(PPAP2A〜C)としても知られる)(Brindleyら、2002;HiroyamaおよびTakenawa、1999;Pyneら、2005;Tanakaら、2004)。読み出し情報としてカルシウムイメージングを使用し、LPP1の過剰発現は、LPAの脱リン酸化を介してLPA受容体の情報伝達を阻害することが示された(Pilquilら、2001;Zhaoら、2005)。PAPは、このような細胞ベースのアッセイを使用して研究されていない。]
[0044] LPAは、DRGニューロンおよび疼痛に関連する行動への、いくつかの、十分に裏づけされた直接的な効果を有する(ParkおよびVasko、2005)。Elmesおよび共同研究者は、細胞内カルシウムレベルが、LPAによる刺激後に、小径DRGニューロンにおいて増加することを見出した(Elmesら、2004)。LPAはまた、後肢に注入された場合、脊髄背側部に位置するワイドダイナミックレンジニューロンにおける活動電位の持続時間および頻度を増加させ、かつ侵害受容性屈筋反応を増加させることが示された(Elmesら、2004;Renbackら、1999)。皮膚に注入された場合、LPAは、かゆみ/ひっかき行動をもたらすことが示された(Hashimotoら、2006;Hashimotoら、2004)。かゆみシグナルは、末梢からCNSへ、小径DRGニューロンによって伝達される(Hanら、2006;Schmelzら、1997)。]
[0045] LPAの髄腔内注入は、数日間マウスにおいて持続する、深刻なアロディニアおよび熱痛覚過敏を引き起こすことが示された(髄腔内=i.t.=脊髄の脳脊髄液(「CSF」)へ)(Inoueら、2004)。さらに、Inoueおよび共同研究者は、薬理学的および遺伝的アプローチを使用して、LPA受容体の情報伝達が神経因性疼痛の惹起に必要とされることを示した。Inoueおよび共同研究者は、LPA1−/− マウスは、神経損傷後に、アロディニアおよび熱痛覚過敏を発症しないことを見出した。彼らはまた、神経因性疼痛は、LPA1アンチセンスオリゴヌクレオチドの髄腔内注入、ボツリヌストキシンC3細胞外酵素の髄腔内注入(BoTXC3は、LPA1の下流で活性化されるRhoAを阻害する)、およびROCK(これはRhoAの下流にある)の全身性薬理学的阻害によって遮断することができることを見出した(Inoueら、2004)。決定的ではないが、彼らの研究は、DRGにおけるLPA1受容体の活性化が、これらの効果のために必要とされることを示唆した。]
[0046] 髄腔内LPA注入はまた、坐骨神経における脱髄、および電位開口型のカルシウムチャネルのα2δ1サブユニット(Caα2δ1)の上方制御をもたらすことが示された(Inoueら、2004)。Caα2δ1は、神経因性疼痛モデルにおけるDRGにおいて上方制御され、薬物ガバペンチンの標的である(Fieldら、2006;Luoら、2001;Maneufら、2006)。ガバペンチンは、ヒトにおける神経因性疼痛を治療するために、頻繁に処方される(BaillieおよびPower、2006;Dworkinら、2003)。まとめると、これらの研究は、LPA情報伝達が、DRGニューロンの生理機能、侵害受容回路の感作、および病理学的な疼痛状態の促進において直接的な役割を果たすことを示す。]
[0047] 本願明細書において開示された主題は、いずれかの特定の機構に制限されない一方、下記は、1つの提案されるモデルである。健康な、未損傷の動物では、PAPは、LPAを脱リン酸化(分解)し、不活性な非情報伝達状態においてLPA受容体(LPA−R)を維持するように機能する(図7)。末梢神経損傷後、LPAは、血小板およびニューロンによって放出され、細胞外LPA濃度を急激に上昇させる。これらの異常に高いレベルのLPAは、LPAを分解する膜貫通型PAPの触媒能を圧倒する。次いで、これらの高濃度のLPAは、LPA受容体を活性化させ(図7)、神経因性疼痛を惹起する(図7;Inoueら、2004)。従って、当該惹起段階は、精製された、可溶性PAPタンパク質(分泌型アイソフォーム)を、脊髄の脳脊髄液(CSF)へ大量瞬時投与することによって遮断できる(図8A−8C)。PAPの、この大量瞬時投与は、過剰なLPAを分解し、LPA受容体の情報伝達を阻害し、従って、アロディニアおよび痛覚過敏を防ぐ(すなわち、神経因性疼痛の惹起を防ぐ)。] 図7 図8A
[0048] グルタミン酸塩の受容体の活性化もまた、神経因性疼痛を惹起するために必要とされる(Davarら、1991)。LPAの情報伝達は、ニューロンの感作または脱分極によって、グルタミン酸塩の放出を促進できる(ChungおよびChung、2002)。神経損傷後、PAP発現およびFRAP活性は急激に低下し、DRGニューロンにおいて低いままである(実施例3)(Costiganら、2002;CsillikおよびKnyihar−Csillik、1986)。PAPがなければ、LPA濃度は、健康な動物と比較して、損傷した動物において高いだろう。これらの異常なLPA濃度は、慢性的に、DRGニューロン上のLPA受容体を活性化できる。この慢性的な活性化は、DRGニューロンを感作でき、神経損傷後の数日間(維持段階の間)持続するアロディニアおよび痛覚過敏に寄与する可能性がある(図7)。異常なレベルのLPAはまた、神経因性疼痛の維持段階に関与するミクログリアを活性化できる(HainsおよびWaxman、2006;Mollerら、2001;Schillingら、2004;Tsudaら、2003)。本願明細書において開示された主題によれば、PAP活性は、可溶性PAPを脊髄CSFへ注入することによって、維持段階の間に回復できる(図8)。過剰なPAPは、LPAを分解でき、LPAに誘起された情報伝達を減少させることができ、機械的感受性および熱感受性をベースライン値まで回復できる。従って、いくつかの実施態様では、PAPは、神経因性疼痛のための治療として提供される(図9)。] 図7 図8 図9
[0049] 本願明細書において開示された主題は、ウシPAPが、LPAを不活性化させることを示す(実施例7;図4)。図4において見出すことができる通り、細胞内カルシウムレベルは、Rat1細胞がLPA+bPAPによって刺激された場合、はっきりと変化しなかった。しかし、これらの同様の細胞がLPAのみによって刺激された場合、細胞内カルシウムレベルは劇的に変化した。これらのデータは、bPAPが、LPAを脱リン酸化し、かつ、不活性化することを明白に示す。さらに、図5は、マウスPAPが、LPAの脱リン酸化を介して、細胞ベースの構成におけるLPAに誘起された情報伝達を急激に減少させることを示す(実施例8)。LPAの情報伝達のPAP調節が、ホスファターゼ活性に依存することをさらに示すため、ホスファターゼデッドのマウスPAP発現コンストラクト(PAP変異体)を、活性部位残基ヒスチジン12をアラニンに変異させることによって、操作した。次いで、Rat1線維芽細胞は、PAPまたはPAP変異体で形質移入され、カルシウムの反応について、PAPを形質移入された細胞と、形質移入されていない細胞とが、同一の視野において比較された(実施例9)。図6A−6Dにおいて見出すことができる通り、LPAに誘起されたカルシウム反応は、PAP変異体を形質移入された細胞とは対照的に、PAPを形質移入された細胞において顕著に減少した。これらの結果は、PAPを形質移入された細胞における減少したLPA反応は、PAPホスファターゼ活性に依存することを示す。これらの発見は、PAPが、脱リン酸化を通じて、LPAを不活性化することを示唆する。] 図4 図5 図6A
[0050] さらに、いずれかの1つの作用機構に拘束されることなく、本願明細書において開示された主題は、エクトヌクレオチダーゼとして作用し、アデノシンの生成によって疼痛を抑制するPAPの能力にさらに関連する。実施例13に記載される通り、急性および慢性の疼痛に対するPAPの、in vivoにおける効果は、髄腔内アデノシンおよびA1−受容体(A1R)拮抗薬の効果に似ていると思われる。図30を参照。さらに、PAP抗侵害受容は、A1R拮抗薬によって一過性に阻害できると思われる。図29を参照。] 図29 図30
[0051] (III.代表的な実施態様)
実施例10−11は、PAPが、脳脊髄液への注入から3日間、マウスにおいて鎮痛薬として機能することを示す。図10Aおよび図10Bは、活性なウシPAPの髄腔内注入が、マウスにおけるLPAに誘起された機械的感作および熱感作を阻害することを示す。図11A−11D、13および14A−14Cは、活性なヒトまたはウシのPAPの髄腔内注入が、鎮痛薬として機能し、マウスにおける熱感受性を減少させることを示す一方、図12Aおよび図12Bは、別のホスファターゼ(ウシアルカリホスファターゼ(ALP))は、熱感受性または機械的感受性を減少させないことを示す。図17A−17B、18、および19は、ウシおよびヒトのPAPが、マウスにおける慢性的な機械的炎症痛および熱炎症痛を減少させることができることを示す。図20−23は、神経損傷によるアロディニアおよび痛覚過敏は、脊髄におけるPAP活性を増加させることによって、防ぐことができることを示す。例えば、神経部分損傷(SNI)手術によって引き起こされた神経因性疼痛は、損傷した肢における熱刺激に対する痛覚過敏をもたらす。ヒトまたはウシのPAPのいずれかの注入は、約3日間、SNI−損傷した肢における痛覚過敏を顕著に減少させ、損傷していない肢における鎮痛を生じさせる。SNI手術によって引き起こされた機械的感受性(アロディニア)はまた、hPAPまたはbPAPの注入後、約3日間、顕著に減少する。hPAPおよびbPAPは、損傷していない肢における機械的感受性を変化させない。前述のデータは、PAPの単回用量が、マウスがほぼ完全に回復する時点まで、慢性疼痛を治療することを示す。実施例12は、PAPが、PAPノックアウトマウスにおけるアロディニアおよび痛覚過敏(hyperanalgesia)を阻害することを示す。] 図10A 図10B 図11A 図12A 図12B 図17A 図20
[0052] 従って、PAPは、慢性疼痛(動物およびヒトにおける神経因性疼痛および炎症痛を含むが、これらに限定されない)のための治療として提供される。PAP、その活性な変異体、断片もしくは誘導体、またはPAPの小分子修飾因子は、本願明細書において開示された主題において提供される。PAP、またはその活性な変異体、断片もしくは誘導体は、精製されたPAPタンパク質を髄腔内に注入することによって投与でき、または、小分子修飾因子を(全ての可能性がある経路を介して)投与することによって、疼痛感受性のニューロン上に通常存在するPAPを活性化することができる。これらの治療は、手術の前後に、外科的疼痛の治療、分娩に関連する疼痛の治療、慢性炎症痛(変形性関節症、熱傷、関節痛、腰痛)の治療、内臓痛、片頭痛、群発性頭痛、頭痛および線維筋痛症の治療、ならびに慢性神経因性疼痛の治療のために使用できる。神経因性疼痛は、神経損傷(外傷、手術、癌、ウイルス感染様帯状疱疹および糖尿病性神経障害によってもたらされた損傷を含むが、これらに限定されない)によって引き起こされる。]
[0053] ヒトPAPタンパク質の分泌型アイソフォームは、市販されており、PAPは、男性の血液内を循環している(Vihkoら、1978a)。これは、疼痛を患っている患者へのPAPタンパク質の注入が、耐容性がよいことを示唆する。さらに、選択的PAP阻害剤が製薬会社によって以前に同定されているため、PAPは「新薬の開発につながるような(druggable)」タンパク質である(Beersら、1996)。PAP活性化剤またはアロステリック調節因子もまた、疼痛の治療のための効果的な薬物として、この開示において提供される。PAPの小分子修飾因子を同定するための方法は、この開示において提供される。このような方法としては、本願明細書において開示された主題の生化学的かつ細胞ベースのアッセイ(実施例12に記載されたアッセイを含む)を使用するPAP修飾因子についての高処理スクリーニング(HTS)が挙げられる。いくつかの実施態様では、大化合物のライブラリーがスクリーニングされ、非常に低い用量でPAPを活性化する薬物が同定される。PAPは、LPA受容体よりもずっと少ない組織において発現すると考えられ、PAP活性を増加させる小分子は、より高い特異性かつ、より少ない副作用で、神経因性疼痛および炎症痛、ならびに他のヒトの疾病(嚢胞性線維症など)を治療するために使用できる。]
[0054] 本願明細書において開示された主題は、いずれかの特定の機構に限定されない一方で、1つのモデルでは、PAPは、アデノシン一リン酸(AMP)のアデノシンへの変換を触媒することによって、本願明細書において開示された鎮痛効果を引き起こす。実験結果は、PAPが、脊髄組織におけるAMPを脱リン酸化できることを示す。さらに、アデノシンは、鎮痛薬であり、神経因性疼痛を患っているヒトにおけるアロディニアを減少させる(Lynchら、2003;Sjolundら、2001)。AMPは、げっ歯類の脊髄に注入された場合に、アデノシンに変換され、アデノシン受容体の活性化を介して鎮痛を引き起こす(Pattersonら、2001)。従って、本願明細書において開示された主題のいくつかの実施態様では、PAPは、疼痛の治療のために、AMPとともに同時投与される。いくつかの実施態様では、PAPによって、アデノシンに脱リン酸化できるAMPの類似体は、PAPとともに同時投与される。いくつかの実施態様では、これらの類似体は、生物学的組織において、より安定であり、親油性であり、好ましい薬物代謝および薬物動態(DMPK)を有する。本願明細書に記載された主題のいくつかの実施態様では、疼痛の治療のためのPAPの投与は、アデノシン、アデノシン一リン酸(AMP)、AMP類似体、アデノシンキナーゼ阻害剤、アデノシンキナーゼ阻害剤 5’−アミノ−5’−デオキシアデノシン、アデノシンキナーゼ阻害剤 5−ヨードツベルシジン、アデノシンデアミナーゼ阻害剤、アデノシンデアミナーゼ阻害剤 2’−デオキシコホルマイシン、ヌクレオシド輸送体の阻害剤、ヌクレオシド輸送体の阻害剤ジピリダモールのうち1つ以上と組み合わされる。本願明細書に記載された主題のいくつかの実施態様では、疼痛の治療のためのPAPの投与は、1つ以上の公知の鎮痛薬(オピエート(例えば、モルヒネ、コデインなど)を含むが、これに限定されない)と組み合わされる。]
[0055] アデノシンおよびアデノシン受容体作動薬は、嚢胞性線維症(CF)のための治療として当該技術分野において試験される。いくつかの実施態様では、PAPは、患者の肺へエアロゾル化され、内在性のAMPがアデノシンに変換され、従って、CFのための治療として機能する。]
[0056] 男性と女性とで異なって影響するいくつかの疼痛の症状がある(Craftら、2004;GilesおよびWalker、1999)。PAPの発現は、前立腺で、アンドロゲンに制御される(Porvariら、1995)。本願明細書において開示された主題のいくつかの実施態様では、PAPは、ヒトの健康に影響する様々な疼痛の症状を治療および診断するために有用である。いくつかの実施態様では、方法は、痛み止めに対する個体の反応を診断するために提供され、当該個体のPAPゲノムの遺伝子座の中および周囲の1つ以上の一塩基多型(SNP)、挿入または欠損を同定する工程、ならびに当該SNPを、当該痛み止めに対する所定の反応と関連付ける工程を含む。いくつかの実施態様では、方法は、疼痛についての個体の閾値を診断するために提供され、当該個体のPAPゲノムの遺伝子座の中および周囲の1つ以上の一塩基多型(SNP)、挿入または欠損を同定する工程、ならびに当該SNPと、疼痛についての所定の閾値とを関連付ける工程を含む。いくつかの実施態様では、方法は、男性および女性のDRGニューロンにおけるPAPの差次的な発現と、疼痛反応とを関連付けるために提供され、当該方法は、PAPが男性および女性のDRGニューロンにおいて差次的に発現する程度を特定する工程、ならびに男性と女性との間での、疼痛または痛み止めに対する反応差を同定する工程、ならびに差次的な発現の程度と、疼痛または痛み止めに対する反応差とを関連付ける工程を含む。]
[0057] (IV.PAP含有組成物)
本願明細書において開示された主題の実施態様における使用のためのPAPタンパク質の調製物は、様々な方法を使用して調製できる。ヒト PAPは、シグマアルドリッチおよび他の業者から市販されている。PAPの生成は、一般的に、調製物が無菌であり、エンドトキシンフリーであり、ヒトへの使用について許容できることを保証するために、品質管理を必要とする。]
[0058] PAPまたは活性なPAP変異体、断片もしくは誘導体の適した調製物を得る組み換え法もまた、適している。PAPcDNA(実施例1に記載されたcDNAなど)を使用して、組み換えタンパク質は、組み換えタンパク質発現のための多くの公知の方法のうちの1つ(例えば、Vihkoら、1993参照)によって産生できる。本願明細書において開示された主題のPAPペプチドをコードする、単離されたヌクレオチド配列、およびこれらのヌクレオチドを含む発現ベクターが提供される。当該発現ベクターを含む宿主細胞もまた提供される。本願明細書において開示された主題は、ウイルスベクター移入カセット(PAPまたはその活性な変異体もしくは断片をコードするヌクレオチド配列を含む、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、およびレトロウイルスのベクター移入カセットなど、しかしこれらに限定されない)を含む。]
[0059] 活性なPAP変異体および断片は、変異誘発技術(部位特異的な変異原性(Ostaninら、1994)、体細胞超変異(WangおよびTsien、2006)および欠損コンストラクトの作製を含む)を使用して産生でき、より安定であるか、または、LPAおよびAMPのような基質についてより高いkcatを有するhPAPのバージョンを展開させることができる。本願明細書において開示された主題の活性なPAP変異体、断片または誘導体は、保存的アミノ酸置換、非天然アミノ酸置換、D−またはD,L−ラセミ混合物異性体型アミノ酸置換、アミノ酸化学置換、カルボキシ末端修飾またはアミノ末端修飾、および生体適合性の分子(脂肪酸およびPEGを含む)への結合を含む、1つ以上の修飾を含む可能性がある。]
[0060] 用語「保存的に置換された変異体」は、1つ以上の残基が、機能的に類似する残基で保存的に置換され、かつ、(例えば、PAPの)参照ペプチドについて本願明細書に記載されたような活性を示す、参照ペプチドの配列と実質的に同一のアミノ酸残基配列を含むペプチドを指す。語句「保存的に置換された変異体」はまた、残基が、化学的に誘導体化された残基で置換されたペプチド(ただし、得られたペプチドは、本願明細書において開示された参照ペプチドの活性を示す)を含む。]
[0061] 保存的な置換の例としては、1つの非極性(疎水性)残基(イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンなど)の、別のものへの置換、(アルギニンとリジンとの間、グルタミンとアスパラギンとの間、グリシンとセリンとの間などの)1つの極性(親水性)残基の、別のものへの置換、1つの塩基性残基(リジン、アルギニンまたはヒスチジンなど)の、別のものへの置換、または1つの酸性残基(アスパラギン酸またはグルタミン酸など)の、別のものへの置換が挙げられる。]
[0062] 本願明細書において開示された主題のペプチドはまた、当該ペプチドの必要な活性が維持される限り、配列が本願明細書において開示されているペプチドの配列に対する1つ以上の付加および/もしくは欠損、または残基を含むペプチドを含む。用語「断片」は、本願明細書において開示されたペプチドの配列よりも短いアミノ酸残基配列を含むペプチドを指す。]
[0063] PAP、および、特に、より小さな分子量の活性なPAP変異体、断片または誘導体は、従来の方法を使用した化学合成によって得ることができる。例えば、固相合成技術は、PAPまたはその活性な変異体、断片もしくは誘導体を得るために使用できる。]
[0064] いくつかの実施態様では、PAPの調製物は、PAPタンパク質または活性なPAP変異体、断片もしくは誘導体が、固定化担体(アガロース、セファロース、およびナノ粒子などの担体を含む)と複合体を形成して、提供される。このような固定化を通じて、PAPは、分解から保護され、より長い期間、原位置に維持される。このようにして、本願においては、PAP鎮痛が3日間認められ、いくつかの実施態様では、数週間または数ヶ月まで延長することができる。]
[0065] (V.治療方法)
PAPは、動物における疼痛および嚢胞性線維症の治療のために、様々な方法によって投与できる。当該PAP、その活性な変異体、断片もしくは誘導体、および/またはPAP修飾因子は、注入、経口投与、座剤、外科的な埋め込み型のポンプ、肺へのエアロゾル化、幹細胞、ウイルス遺伝子療法、またはネイキッドDNA遺伝子治療のうち1つ以上を介して投与できる。注入としては、いずれのタイプの注入(静脈内注入、硬膜外注入または髄腔内注入など、しかしこれらに限定されない)を挙げることができる。]
[0066] いくつかの実施態様では、PAP活性の小分子修飾因子は、経口投与によって投与される。]
[0067] いくつかの実施態様では、PAP、またはその活性な変異体、断片もしくは誘導体を含む、治療的有効量の組成物または医薬製剤は、動物またはヒトに、注入によって投与される。いずれかの適した注入方法(髄腔内、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、門脈内、皮内、硬膜外、または皮下など)を使用できる。いくつかの実施態様では、PAPは、望ましくない生理的効果を引き起こさない、全ての生理学的に許容できる担体中で分散される。適した担体の例としては、生理食塩水およびリン酸緩衝食塩水が挙げられる。注入可能な溶液は、従来の方法を使用して、担体中に、活性なPAPの適した調製物を溶解または分散することによって調製できる。いくつかの実施態様では、PAPは、0.9% 生理食塩水中で与えられる。いくつかの実施態様では、PAPは、リポソーム(イムノリポソームなど)、または当該技術分野で公知の他の送達系もしくは製剤に封入されて提供される。]
[0068] いくつかの実施態様では、治療的有効量のPAP、もしくはその活性な変異体、断片もしくは誘導体を含む組成物または医薬製剤は、局所組織へのPAPの送達のための外科的な埋め込み型のポンプ装置を通じて提供される。いくつかの実施態様では、当該外科的な埋め込み型のポンプ装置は、埋め込み型注入ポンプおよび埋め込み型脊髄内カテーテルを含む、髄腔内の薬物送達系である。例えば、慢性疼痛治療のためにオピエートを送達するために使用される市販の装置を参照(Medtronic、米国、ミネソタ州、ミネアポリス)。いくつかの実施態様では、キットは、治療的有効量のPAP、またはその活性な変異体、断片もしくは誘導体、および局所組織へのPAPの送達のための外科的な埋め込み型のポンプ装置を含む組成物または医薬製剤を含み、動物における疼痛の治療のために提供される。]
[0069] いくつかの実施態様では、動物は、嚢胞性線維症について、PAPで治療される。いくつかの実施態様では、当該動物は、治療的有効量のPAP、またはその活性な変異体、断片もしくは誘導体、あるいは治療的有効量のPAP活性増強修飾因子を含む、組成物または医薬製剤が投与され、当該PAP組成物は肺中でエアロゾル化される。]
[0070] いくつかの実施態様では、動物は、PAPを発現している胚性幹(ES)細胞の髄腔内注入を通じて、PAPまたはその活性な変異体もしくは断片を投与される(例えば、Wuら、2006参照)。この方法は、体細胞核移植(SCNT)による、患者特異的なES細胞の誘導を利用する。このアプローチの成否は、動物モデルにおいて示された。造血幹細胞(HSC)、ニューロンまたは他の細胞型に、in vitroで分化でき、対象動物またはヒトに移植できる細胞が産生される。]
[0071] いくつかの実施態様では、治療的有効量のPAP、またはその活性な変異体、断片もしくは誘導体は、1日1回投与できる。いくつかの実施態様では、当該用量は、週に2または3回投与される。いくつかの実施態様では、投与は、週に1回または隔週で1回行われる。]
[0072] いくつかの実施態様では、当該治療的有効量のPAPまたはその活性な変異体もしくは断片は、当業者に「遺伝子治療」として知られる方法によって投与される。本願明細書で使用される遺伝子治療は、外因性核酸を、対象の適切な細胞に挿入することによって、対象の病的状態を治療するための一般的な方法を指す。当該核酸は、その機能性を維持するような様式で、例えば、特定のポリペプチドを発現する能力を維持するような様式で細胞に挿入される。いくつかの実施態様では、治療的有効量のPAPは、ウイルス遺伝子療法を介して、PAPまたはその活性な変異体もしくは断片をコードする核酸配列を含むウイルスベクター移入カセット(例えば、レトロウイルス、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスのカセット)を使用して投与される。]
[0073] 本願明細書において開示された主題の方法に関して、好ましい対象は、脊椎動物の対象である。好ましい脊椎動物は、温血動物である。好ましい温血脊椎動物は哺乳類である。現在開示された方法によって治療される対象は、好ましくはヒトであるが、本願明細書において開示された主題の原則は、用語「対象」に含まれる全ての脊椎動物種に対する有効性を示すことが理解される。この構成において、脊椎動物は、障害の治療が望ましい全ての脊椎動物種であることが理解される。本願明細書で使用される「対象」は、ヒトおよび動物の対象の両方を含む。従って、動物の治療用途が、本願明細書において開示された主題に従って提供される。]
[0074] このように、本願明細書において開示された主題は、哺乳類(ヒトなど)、および絶滅の危機に瀕しているために重要な哺乳類(アムールトラなど)、経済的に重要な哺乳類(ヒトによって消費されるべく農場で育てられる動物など)、および/または、ヒトにとって社会的に重要な動物(ペットとして、または動物園で飼育されている動物など)の治療のために提供される。このような動物の例としては、肉食動物(ネコおよびイヌなど)、ブタ(swine)(ブタ(pig)、雄ブタ、およびイノシシを含む)、反芻動物および/または有蹄動物(ウシ、雄ウシ、ヒツジ、キリン、シカ、ヤギ、バイソン、およびラクダならびにウマなど)が挙げられるが、これらに限定されない。トリの治療(絶滅の危機に瀕したトリ、および/または、動物園で、もしくはペットとして飼育されるトリなど(例えば、オウム)、ならびに家禽(fowl)、特に家畜化された家禽、すなわち、家禽類(poultry)(例えば、シチメンチョウ、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ホロホロチョウなど)の治療を含む)も、ヒトにとって経済的に重要であるため、提供される。従って、家畜(家畜化されたブタ、反芻動物、有蹄動物、ウマ(競争馬を含む)、家禽などを含むが、これらに限定されない)の治療もまた、提供される。]
[0075] (VI.診断学)
いくつかの実施態様では、対象の遺伝子型は、疼痛および/または疼痛の薬物療法に対する対象の反応を予測するための有用な情報を特定するために使用できる。本願明細書で使用される用語「遺伝子型」は、生物の遺伝子の構造を意味する。遺伝子型の発現は、生物の表現型、すなわち、生物の身体的特徴を生み出す可能性がある。用語「表現型」は、生物および環境の遺伝子型の相互作用によって生じる、生物のいずれかの観察可能な特性を指す。表現型は、表現型の可変の発現度および浸透率を包含する可能性がある。代表的な表現型としては、可視の表現型、生理的な表現型、感受性の表現型、細胞の表現型、分子の表現型、およびそれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。当該表現型は、疼痛反応および/または疼痛の薬物療法に対する反応に関連する可能性がある。特定の対象の遺伝子型は、参照遺伝子型、または1人以上の他の対象の遺伝子型と比較でき、現在の、または予測的な表現型に関連する有用な情報を与える。]
[0076] 本願明細書で使用される、対象の「遺伝子型を特定する」とは、生物の少なくとも一部の遺伝子の構造を特定すること、特に、表現型の指標または予測として使用できる、対象における遺伝的変動を特定することを指す可能性がある。特定された遺伝子型は、対象の全ゲノムである可能性があるが、通常、ずっと少ない配列しか必要とされない。いくつかの実施態様では、遺伝子型の特定は、対象におけるPAPゲノムの遺伝子座内およびその周囲の1つ以上の多型性(一塩基多型(SNP)、挿入、欠損および/または他のタイプの遺伝的変異を含む)を同定する工程を含む。本願明細書で使用される用語「多型性」は、集団における、2以上の遺伝的に特定された別の変異配列(すなわち、対立遺伝子)の発生を指す。多型マーカーは、相違が生じる遺伝子座である。代表的なマーカーは、少なくとも2の対立遺伝子を有し、それぞれ、1%よりも大きい頻度で生じる。多型の遺伝子座は、1の塩基対(例えば、一塩基多型(SNP))ほどに小さくてもよい。]
[0077] いくつかの実施態様では、本願明細書において開示された主題は、痛み止めに対する個体の反応を診断するための方法であって、当該個体のPAPゲノムの遺伝子座の中および周囲の1つ以上のSNP、挿入、欠損および/または他のタイプの遺伝的変異を同定する工程、ならびに当該SNP、挿入、欠損および/または他のタイプの遺伝的変異を、当該痛み止めに対する所定の反応と関連付ける工程を含む方法を提供する。例えば、痛み止めに対する個体の(または、集団のサブセットの)反応は、対照集団における当該痛み止めに対する反応と比較できる。それから、個体(または、集団のサブセット)が、PAP遺伝子に関連する1つ以上の遺伝的変動を有するかどうかを特定することができる。いくつかの実施態様では、特定の遺伝的変動が、疼痛または疼痛の薬物療法に対して反応する能力に関連する可能性がある。例えば、遺伝的変動は、特定の疼痛反応行動に統計的に関連する可能性がある。従って、いくつかの実施態様では、本願明細書において開示された主題は、個体の(または、集団のサブセットの)、疼痛についての閾値および/または急性疼痛から慢性疼痛への移行に対する傾向を診断する方法であって、当該個体のPAPゲノムの遺伝子座の中および周囲の1つ以上の一塩基多型(SNP)挿入、欠損および/または他のタイプの遺伝的変異を同定する工程、ならびに当該SNP、挿入、欠損および/または他のタイプの遺伝的変異を、疼痛についての所定の閾値または急性疼痛から慢性疼痛への移行に対する傾向と関連付ける工程を含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、当該方法は、男性および女性のDRGニューロンにおけるPAP発現の相違を関連付ける工程、男性および女性の間の疼痛または痛み止めに対する反応差を同定する工程、ならびに差次的な発現の程度を、疼痛または痛み止めに対する反応差と関連付ける工程に関する。]
[0078] 遺伝的変動(SNPなど)を特定する様々な方法は、当該技術分野で公知である。例えば、米国特許第6,972,174号は、可能性のあるSNP部位に隣接するポリメラーゼ連鎖伸張反応に基づく、SNPを特定する方法を提供する。米国特許第6,110,709号には、対象となる核酸の第1の増幅、次いで制限解析、および固形担体上の結合因子への増幅産物の固定化による、核酸分子におけるSNPの存在または不存在を検出するための方法が記載されている。国際公開第9302212号には、ジデオキシヌクレオチドが、様々な長さの増幅産物を作製するために使用される核酸の増幅および配列決定のための別の方法が記載されている。次いで、この様々な長さの産物は、ゲル電気泳動によって分離され、視覚化される。国際公開第0020853号には、さらに、配列変化によって引き起こされた核酸の構造変化についてスキャンするために、しっかりと制御されたゲル電気泳動の条件を使用して、一塩基変化を検出する方法が記載されている。]
[0079] (VII.実施例)
本願明細書において開示された主題は、これから、さらに十分に、代表的な実施態様が示される下記の実施例への参照とともに記載される。しかし、本願明細書において開示された主題は、異なる形式で具体化でき、本願明細書に記載された実施態様に制限されるように解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施態様は、この開示を詳細かつ完全にし、当業者に実施態様の範囲を完全に伝達するように提供される。]
[0080] (実施例1)
(方法)
(分子生物学)
ACPP−膜貫通型アイソフォーム(マウスPAP)の全長の発現コンストラクト(ジェンバンク(登録商標)受入番号NM_207668からのnt 64−1317;配列番号:2)を、鋳型としてのC57BL/6 マウスの三叉神経のcDNA、およびPhusionポリメラーゼ(New England BioLabs、米国、マサチューセッツ州、ベバリー)を使用して、RT−PCRの増幅によって作製した。PCR産物を、pcDNA3.1(インビトロジェン、米国、カリフォルニア州、カールズバッド)にクローン化し、完全に配列決定した。ACPP、分泌型変異体(ジェンバンク(登録商標)受入番号 NM_019807からのnt 1544−2625;配列番号:3)およびACPP、膜貫通型変異体(ジェンバンク(登録商標)受入番号 NM_207668からのnt 1497−2577;配列番号:4)の、アイソフォーム特異的な、in situハイブリダイゼーションのプローブを、PCR増幅によって、鋳型としてのC57BL/6 マウスのゲノムDNAおよびPhusion ポリメラーゼを使用して作製した。プローブをpBluescript−KS(Stratagene、米国、カリフォルニア州、ラ・ホーヤ)にクローン化し、完全に配列決定した。]
[0081] カルボキシル−末端のトロンビン切断部位−ヘキサヒスチジンタグに融合した、マウスPAPの分泌型アイソフォーム(ジェンバンク(登録商標)受入番号NM_019807からのnt 64−1206;配列番号:5)を含む、pFastBACバキュロウイルス発現ベクターを作製した。同様に、カルボキシル−末端 トロンビン切断部位−ヘキサヒスチジンタグに融合した、ヒト PAPの分泌型アイソフォーム(ジェンバンク(登録商標)受入番号 NM_001099からのnt 43−1200;配列番号:6)を含む、pFastBAC バキュロウイルス発現ベクターを作製した。]
[0082] (in situハイブリダイゼーション)
in situ ハイブリダイゼーションを、ジゴキシゲニンで標識されたアンチセンスリボプローブおよびセンス(対照)リボプローブを使用して、Dongらが記載したように行った。]
[0083] (細胞培養)
HEK 293細胞を、37℃、5% CO2で、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、高グルコース(1%ペニシリン、1%ストレプトマイシンおよび10%ウシ胎児血清を添加した)中で培養した。形質移入のため、ウェルあたり6×105の細胞を、6−ウェルのディッシュ中に播種した。細胞を、Lipofectamine Plus(インビトロジェン、米国、カリフォルニア州、カールズバッド)を使用して、0.5μg ACPP−膜貫通型アイソフォームおよび0.5μgファルネシル化されたEGFP(EGFPf)で同時形質移入した。形質移入の24時間後に、試料を、全ての細胞が形質移入されたことを確かめるために、内在性EGFPfの蛍光についてイメージ化した。次いで、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)中4%パラホルムアルデヒドで固定し、FRAP組織化学を使用して染色した。]
[0084] (組織の調製)
脊椎動物が関与する全ての手順は、ノースカロライナ大学(チャペルヒル)およびオウル大学での、動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committees)によって承認された。]
[0085] FRAP組織化学については、野生型の成体オスマウスおよびPAP−/− 成体オスマウス(6−12週齢)を、ペントバルビタールで麻酔し、20mL 0.9%生理食塩水(4℃)、次いで、25mL固定液(4%パラホルムアルデヒド、0.1Mリン酸バッファー、pH 7.3、4℃)で、経心的に灌流した。脊柱を解剖し、次いで、20%ショ糖、0.1M リン酸バッファー、pH 7.3中で、4℃で凍結保護した(2−3日間)。腰膨大(L4−L6領域)を含む脊髄、およびL4−L6 DRGを、慎重に解剖し、OCT中で凍結した。]
[0086] 免疫蛍光染色については、野生型の成体オスマウスを、頸椎脱臼または断頭によって屠殺した。腰髄およびDRG(L4−L6)を解剖し、次いで、それぞれ、6時間および2時間、後置(postfixed)した。組織を、20%ショ糖、0.1Mリン酸バッファー中、pH7.3、4℃で、24時間凍結保護し、OCT中で凍結し、クリオスタットによって、15−20μmで切り出し、Superfrost Plusスライドに載せた。スライドを−20℃で保存した。クリオスタット切片(Free−floating section)を30μmで切り出し、すぐに染色した。]
[0087] (FRAP組織化学)
FRAP/チアミンモノホスファターゼ(TMPase)組織化学を、基本的に、Shieldsら(2003)が記載したようにして、SilvermanおよびKruger(1988)によって提案された改変をして行なった。細胞または組織の切片を、40mM Trizma−マレイン酸(TM)バッファー(pH 5.6)で2度洗浄し、次いで、8%(w/v)ショ糖を含むTMバッファーで1度洗浄した。FRAPを有する細胞および軸索上に鉛を沈殿させるため、試料を、37℃で2時間、TMバッファー(8% ショ糖(w/v)、6mM チアミン一リン酸クロリド、2.4mM硝酸鉛を含む)中でインキュベーションした。硝酸鉛は、使用の直前に、調製したてのものでなければならない。非特異的なバックグラウンド染色を減少させるため、試料を2%酢酸で1分間、1回洗浄した。次いで、試料をTMバッファーで3回洗浄し、10秒間、1%硫化ナトリウムで現像し、PBS(pH 7.4)で数回洗浄し、Gel/Mount(Biomeda社、米国、カリフォルニア州、フォスターシティ)に取り付けた。画像は、Zeiss AxioskopおよびオリンパスDP−71カメラを使用して得た。]
[0088] FRAP活性についてHEK 293細胞をアッセイした場合、デュプリケートの試料を、0.1%トリトンX−100を含む(または含まない)最初のTM洗浄液で染色した。FRAP組織化学的染色は、洗浄液で透過処理された細胞において強く、おそらく、小胞体およびゴルジ体中のTM−PAPの細胞内の貯蔵を検出していた。]
[0089] (免疫蛍光)
クリオスタット切片およびスライドに載せた切片を、50mMトリス塩基、460mM NaCl、0.3%トリトンX−100、pH 7.6(TBS+TX;高塩濃度は、最適なPAP抗体染色のために必須だった)で3回洗浄し、60分間、10%ヤギ血清を含むTBS+TX4中でブロッキングし、次いで、一晩、4℃で、ブロッキング溶液で希釈された一次抗体とインキュベーションした。使用した抗体は、下記を含む: 1:1000ウサギ抗GFP(A−11122、Molecular Probes、米国、オレゴン州、ユージーン)、1:1000ニワトリ抗GFP(GFP−1020、Aves Labs、米国、オレゴン州、タイガード)、1:250マウス抗NeuN(MAB377、Chemicon、米国、マサチューセッツ州、ビルリカ)、1:800モルモット抗CGRP(T−5027、Peninsula Laboratories社、米国、カリフォルニア州、サンカルロス)、1:750 ウサギ抗CGRP(T−4032、Peninsula Laboratories社、米国、カリフォルニア州、サンカルロス)、1:1000 ウサギ抗P2X3(AB5895、Chemicon、米国、マサチューセッツ州、ビルリカ)、1:300 モルモット抗P2X3(GP10108、Neuromics、米国、ミネソタ州、イダイナ)、1:100 マウス抗PKCγ(クローンPKC66、カタログ番号 13−3800、Zymed Laboratories社、米国、カリフォルニア州、サウスサンフランシスコ)、1:1000 ウサギ抗PKCγ(c−19、カタログ番号 sc−211、Santa Cruz Biotechnology社、米国、カリフォルニア州、サンタクルーズ)、1:1000 ウサギ抗ヒトPAP(Biomeda Corporation、米国、カリフォルニア州、フォスターシティ)。]
[0090] Biomedaの抗PAP抗体の特異性は、下記によって確かめた:a)一次抗体を除いた場合の染色の不存在、および、b)PAP−/−マウスからの、DRGおよび脊髄切片中の染色の不存在。Mrgprdを発現している細胞および軸索を、MrgprdΔEGFPf マウスからの組織を、抗GFP抗体で染色することによって、視覚化した。次いで、切片をTBS+TXで3回洗浄し、2時間、室温で、二次抗体とインキュベーションした。全ての二次抗体を、ブロッキング溶液中で1:250に希釈し、Alexa−488、Alexa−568、またはAlexa−633蛍光色素(Molecular Probes、米国、オレゴン州、ユージーン)、またはFITC、Cy3、もしくはCy5 蛍光色素(Jackson ImmunoResearch、米国、ペンシルベニア州、ウエストグローブ)と結合させた。IB4結合を検出するため、1:100 Griffonia simplicifolia isolectin GS−IB4−Alexa 488(I−21411、Molecular Probes、米国、オレゴン州、ユージーン)を、二次抗体のインキュベーション中に添加した。ビオチンに結合した二次抗体を使用し、次いで、1:250ストレプトアビジン−Cy3(Jackson ImmunoResearch、米国、ペンシルベニア州、ウエストグローブ)、またはTyramide Signal Amplification kit(New England Nuclear、米国、マサチューセッツ州、ボストン、製造者の手順に従った)のいずれかを使用することによって、抗PAP抗体シグナルを増幅することが必要だった。]
[0091] 染色後、切片をTBS+TXで3回洗浄し、次いで、PBSで3回洗浄し、Gel/Mount(Biomeda Corporation、米国、カリフォルニア州、フォスターシティ)に濡れたまま載せた。画像は、ライカTCS−NT共焦点顕微鏡(ライカマイクロシステムズ、ドイツ、ウェッツラー)を使用して得た。全ての細胞数は、パーセンテージ+/−平均値の標準誤差(SEM)として表わされる。]
[0092] (FRAP組織化学と合わせた免疫蛍光)
DRG中の、免疫蛍光組織化学とFRAP組織化学との間の重複を示すため、隣接する15μmの切片を、抗PAP抗体で染色し、かつFRAP組織化学のために染色した。同様の方法は、FRAPを、抗体およびレクチンマーカーと共局在化させるために、以前に使用されており、隣接する切片の使用により、共発現細胞の数を過小評価している(Doddら、1983;NagyおよびHunt、1982;SilvermanおよびKruger、1988;SilvermanおよびKruger、1990)。技術的な制限によって、免疫蛍光およびFRAP組織化学のための、同様のDRG切片の連続的な処理が阻まれた。]
[0093] 脊髄組織における重複を示すため、同一の切片を抗PAP抗体で第1に染色し、共焦点顕微鏡観察を使用してイメージ化し、次いで、この切片をFRAPのために組織化学的に染色し、透過型光学顕微鏡観察によってイメージ化した。この手順は、公表された方法に基づく(Wangら、1994)。蛍光および透過光の画像は、必要に応じて画像を拡大縮小および回転することによって、Photoshopでオーバーレイを行った。]
[0094] (行動)
C57BL/6オスマウス(2−3ヶ月齢)を、Jackson Laboratories(米国、メイン、バーハーバー)から、PAPタンパク質の注入に関連する全ての行動実験のために購入した。全てのマウスは、行動試験の1日前に、試験室、設備および実験者に順化させた。実験者は、行動試験の間、遺伝子型および薬物治療について知らされていなかった。]
[0095] 熱感受性は、Hargreaves法(Hargreavesら、1988)に従い、Plantar Test装置(IITC)で1本の後肢を熱することによって測定した。放射熱源の強さを、肢の退避反射が、野生型C57BL/6マウスにおいて平均して約10秒内に惹起されるように較正した。カットオフタイムは20秒だった。1回の測定結果は、1日ごとに各肢から得て、肢の退避潜時を特定した。尾浸漬(tail immersion)アッセイを行うため、マウスをタオル中で穏やかに拘束し、尾の末端から3分の1を46.5℃の水に浸漬した。退避した尾についての潜時を、マウスあたり1回測定した。機械的感受性を、電気的von Frey装置(IITC)に取り付けられた半硬化チップ(semi−rigid tip)を使用して、他で記載されたように(Cunhaら、2004;Inoueら、2004)測定した。各肢から3回の測定結果を得て(5分間隔で離した)、次いで、グラム単位の肢の退避の閾値を特定するために平均した。]
[0096] 持続性の炎症痛を引き起こすため、20μL完全フロイントアジュバント(CFA、シグマ)を、1本の後肢の無毛皮膚の中央下部(centrally beneath)に、27Gの針で注入した。神経因性疼痛の神経部分損傷(SNI)モデルを記載されたように(Shieldsら、2003)行った。]
[0097] (髄腔内注入)
hPAP、bPAPおよび溶媒対照を、記載されたように(Fairbanks、2003)、無麻酔のマウスの腰部に注入した。]
[0098] (実施例2)
(組み換えPAPの調製)
C末端にトロンビン切断部位およびヘキサヒスチジン精製タグを含む、マウスPAP(分泌型アイソフォーム;ジェンバンク(登録商標)受入番号NM_019807からのnt 64−1206;配列番号:5)バキュロウイルス発現コンストラクトを、実施例1に記載されたクローンおよび当該技術分野において標準的な手順を使用して作製した。組み換えマウス PAPを、個別払いのタンパク質精製コア施設を使用して精製した。トロンビン−ヘキサヒスチジン C末端タグを有する、hPAP(分泌型アイソフォーム;ジェンバンク(登録商標)受入番号 NM_001099からのnt 43−1200;配列番号:6)発現コンストラクトを同様に構築した。大量の組み換えhPAPタンパク質は、当該技術分野で公知の手順を使用して、このコンストラクトによって産生できた。組み換えhPAPタンパク質は、ヒトの臨床治験における薬物として有用であり、ヒトにおける髄腔内 hPAPの安全性を評価するために使用できる。]
[0099] (実施例3)
(PAPとしてのFRAPの分子同定)
約50年間、多くの小径DRGニューロンが、酸性ホスファターゼ(一般的に、FRAPまたはチアミンモノホスファターゼと呼ばれる)を含むことが知られてきた(CsillikおよびKnyihar−Csillik、1986;Knyihar−Csillik、1986;Colmant、1959)。FRAPは、脊髄のラミナIIにおける非ペプチド作動性DRGニューロンおよびその無髄軸索末端、ならびにペプチド作動性(CGRP+、物質P+)ニューロンの一部を標識するために使用した(HuntおよびMantyh、2001;Carrら、1990)。マーカーとしてのFRAPの使用は、特定のレクチン(Griffonia simplicifolia Isolectin B4(IB4)など)もまた、非ペプチド作動性ニューロンを標識し、FRAPと共局在化することが見出された際に(SilvermanおよびKruger、1988)、衰退した。さらに、FRAPをコードする遺伝子は、明確に同定されたことがなかった。]
[0100] 1980年代初期に、Doddおよび共同研究者は、クロマトグラフィーを使用して、ラットDRGから、FRAPタンパク質を部分的に精製した(Doddら、1983)。部分的に精製されたFRAPタンパク質は、分子量が、ヒト前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)と類似しており、L(+)−酒石酸塩(いくつかの酸性ホスファターゼの非選択的阻害剤)によって阻害された。これらの生化学的実験は、FRAPがPAPである可能性を示唆した。しかし、部分的に精製されたFRAPタンパク質に対して産生された抗体、およびヒト PAPに対する抗体は、脊髄のラミナIIにおける小径DRGニューロンおよびその軸索末端を免疫染色しなかった(SilvermanおよびKruger、1988、Doddら、1983)。これらの決定的でない免疫組織化学的発見は、PAPがFRAPと同一であるかどうかについて疑問を投げかける。]
[0101] このあいまい性を解決するため、FRAPとPAPとの間の関連性を、分子的技術、遺伝的技術および免疫組織化学的技術を使用して、再度試験した。PAPは、分泌型タンパク質、または触媒的酸性ホスファターゼ領域が細胞外に局在する、1型膜貫通型(TM)タンパク質のいずれかとして発現する(Kaijaら、2006;Roikoら、1990)。図1を参照。この分泌型は、広範に研究されてきており、前立腺癌と機能的に関連する(Kaijaら、2006)。膜貫通型の変異体は、カルボキシル末端の近くに1つの疎水性領域を含む(HuntおよびMantyh、2001)(疎水性の分析に基づく)。] 図1
[0102] どちらかのPAPアイソフォームが、小径DRGニューロン(FRAPなど)において発現しているかどうかを特定するため、in situハイブリダイゼーションを、アイソフォーム特異的なプローブで行った。これらの研究により、TM−PAPは、小径DRGニューロンの一部で発現しており(図1および図2A参照)、一方、分泌型アイソフォームは、検出不可能なほどに低いレベルで発現していることが明らかになった。図2Bを参照。] 図1 図2A 図2B
[0103] 次に、FRAP組織化学的活性が、PAP酵素活性に依存している程度を直接的に試験した。これを行うため、マウスTM−PAPをHEK 293細胞中で過剰発現させ、細胞をFRAP組織化学を使用して染色した。空ベクターを形質移入された対照細胞は染色の兆候を示さなかった一方で、TM−PAPを形質移入された細胞は、細胞膜が未処置のままであるか、または、洗浄剤で透過処理された場合に、しっかりと染色された。これは、TM−PAPが、FRAPの組織化学的活性について十分であり、かつ、TM−PAPが、基質を細胞外で脱リン酸化できることを示した。同様の結果を、TM−PAPがRat1線維芽細胞に形質移入された場合に得た。]
[0104] PAPΔ3/Δ3(以下、PAP−/−と呼ぶ)ノックアウトマウスからのDRGおよび脊髄組織もまた分析した。これらのマウスでは、エクソン3の欠損は、前立腺における、PAPタンパク質の切断およびPAP触媒活性の完全な喪失を引き起こす。脊髄におけるDRGニューロンおよび軸索末端のFRAP組織化学的染色は、PAP−/− マウスにおいては顕著に消失した。]
[0105] FRAP染色の不存在は、PAP−/−マウスにおけるニューロンまたは軸索末端の発生上の損失によるものではなかった。野生型マウスおよびPAP−/− マウスは、腰神経節における全てのNeuN+ ニューロンに関連するP2X3+ ニューロンと同じ数を有する(43.4+/−1.9% 対 42.4+/−1.9% 5(平均値の標準誤差)。有意差はない。対応t検定;n=1500 NeuN+ ニューロン、遺伝子型ごとに計測した)。P2X3は、非ペプチド作動性DRGニューロンを標識し、PAPとともに広範に共局在化している。さらに、共焦点画像解析は、脊髄を、CGRPに対する抗体(ペプチド作動性神経終末を標識するため)、イソレクチンB4(IB4、非ペプチド作動性神経終末を標識するため)、およびタンパク質キナーゼC−γに対する抗体(PKCγ、ラミナIIinnerおよびIIIにおける介在ニューロンを標識するため)を使用して試験した場合、遺伝子型間(各遺伝子型からn=2のマウス)の肉眼での解剖学的な相違を明らかにしなかった。]
[0106] これらのデータは、PAPが、FRAP様活性を有する、DRGおよび脊髄における唯一の酸性ホスファターゼであることを示す。さらに、これらの機能獲得実験および機能喪失実験は、小径DRGニューロンにおけるFRAPは、PAPによってコードされることを決定的に示す。]
[0107] PAPが、ヒト DRG組織において同様に発現していることを示すために実験を行った。FRAP組織化学的活性は、ヒトにおける小径DRGニューロンにある(SilvermanおよびKruger、1988a)。RT−PCRは、鋳型として、ヒト DRGからの全RNA(Clontech、米国、カリフォルニア州、パロアルト)、ヒト PAPのイントロンにまたがるプライマー(イントロンにまたがるプライマーは、増幅生成物が、ゲノムDNAではなくcDNAに由来することを保障する)を使用して行った。正しいサイズのバンドを、わずか30サイクル後に得た。公表されたFRAPの組織化学的データと合わせると、この発見は、ヒト 小径(おそらく、侵害受容性)ニューロンがPAPを発現していることを強く示唆する。]
[0108] PAPタンパク質およびFRAPの組織化学的活性はまた、DRGニューロンにおいて細胞レベルで共局在化していることが見出された。これを行うため、いくつかの市販の抗ヒトhPAP抗血清を購入し、マウス前立腺(陽性対照)、DRGおよび脊髄組織で試験した(市販の抗マウスまたは抗ラットのPAP抗体は存在しない)。1つのウサギポリクローナル抗血清は、脊髄のラミナII内の前立腺上皮細胞、小径DRGニューロンおよび軸索末端を染色し、そこはまさにFRAP組織化学が認められた部位だった。尾状核(nucleus caudalis)のラミナ IIにおける小径三叉神経の神経節ニューロンおよび軸索もまた、当該抗体によって標識された。三叉神経の染色は、PAPが頭に関連する疼痛(頭痛または歯痛など)の治療に効果的である可能性があることを示唆する。抗体の特異性は、a)一次抗体を除外した場合の染色の不存在、および、b)PAP−/− マウスからのDRGおよび脊髄切片における染色の不存在によって確かめた。]
[0109] TM−PAPの発現は、PAPタンパク質が、細胞外で、DRGニューロンの細胞膜上に局在することを示唆した(Quinteroら、2007)。これは、抗PAP抗体を使用して、生きた、分離されたマウスDRGニューロンの表面標識によって確かめた。]
[0110] DRGニューロンおよび脊髄を、PAPがペプチド作動性または非ペプチド作動性の侵害受容回路において発現しているかどうかを特定するために、抗体で二重に標識した(表2)。マウスL4−L6 DRGニューロンおよび腰髄切片を、様々な感覚神経マーカーに対する抗体、およびPAPに対する抗体で二重に標識した。成体MrgprdΔEGFPf マウスからの組織を、Mrgprdを発現しているニューロンを同定するために使用した(Zylkaら、2005)。IB4およびMrgprdΔEGFPfは、非ペプチド作動性のニューロンおよび終末のマーカーであり、一方、CGRPは、ペプチド作動性のニューロンおよび終末のマーカーである。これらの研究は、PAPタンパク質が、主に、マウス脊髄のラミナIIにおける非ペプチド作動性ニューロン、およびその軸索末端に局在することを明らかにした。]
[0111] 表2は、マウスL4−L6 DRGニューロン内のPAP、および感覚神経マーカーの共局在の研究の定量分析の結果を示す。画像は、共焦点顕微鏡観察によって得た。組み合わせあたり、少なくとも350の細胞を計測した。共焦点画像からの細胞数は、実質的に全ての非ペプチド作動性DRGニューロンがPAPを共発現し、全てのIB4+(n=497の細胞を計測した)のうち91.6%、全てのMrgprd+ ニューロン(n=357の細胞を計測した)のうち99.2%、および全てのP2X3+ ニューロン(n=824の細胞を計測した)のうち92.6%がPAPを発現していることを示した(Zylkaら、2005)。ペプチド作動性CGRP+ ニューロン(n=1364の細胞を計測した)のうちより低いパーセンテージ(17.1%)がPAPを発現していた。非ペプチド作動性ニューロンにおけるPAPのこの優先的な発現は、FRAP組織化学を感覚神経マーカーと組み合わせて使用した以前の研究と一致する(HuntおよびMantyh、2001;Carrら、1990)。]
[0112] DRGにおけるPAPの膜貫通型アイソフォームにおける主な発現は、FRAPが小径DRGニューロンの膜に局在していることを示す超微細構造的研究(CsillikおよびKnyihar−Csillik、1986)と一致している。従って、TM−PAPおよびFRAPは、DRGニューロン(膜結合性)中の同様の細胞内局在(cellular localization)および細胞内局在(subcellular localization)を共有しており、PAPがFRAPをコードすることをさらに示唆している。まとめると、これらの発見は、50年にわたる謎を解決し、侵害受容性ニューロンにおけるFRAPがPAPと等しいことを示す。]
[0113] ]
[0114] (実施例4)
(疼痛感覚の機構におけるPAPの役割)
マイクロアレイ解析は、坐骨神経の切除(Costiganら、2002)および神経因性疼痛モデルにおける神経損傷(Davis−Taber、2006)から3日後に、ラットDRGにおいて多数の遺伝子が上方制御または下方制御されることを示した。Costiganらが示したマイクロアレイのデータセット(Costiganらが添付図2として示した)を再分析し、全ての241の遺伝子を発現の倍率変化(fold change)によって並べた(なぜなら、当該遺伝子はアルファベット順で記載され、これは生物学的に無意味だからである)。再分析は、PAPmRNAが坐骨神経の切除後に、3.5倍下方制御され、遺伝子全体で2番目に多く下方制御されることを示した。表3を参照。同様に、PAP mRNAは、神経因性疼痛モデルにおいて最も激しく下方制御される遺伝子のうちの1つである(Davis−Taber、2006)。PAP発現は、神経因性疼痛のこれらの動物モデルにおいて下方制御されるため、神経因性疼痛は、PAP活性を回復することによって治療できる可能性がある。] 図2
[0115] ]
[0116] (実施例5)
(DRGニューロンはLPA受容体を発現する)
LPA受容体の発現をDRGニューロンで分析し、LPA受容体の情報伝達の調節におけるPAPについての役割を確かめた。これらの研究を開始した時点で、RT−PCRの実験は、LPA1は、DRGにおける唯一のLPA受容体であることを示した(Inoueら、2004;Renbackら、2000)。より詳細にこれらの受容体の発現を試験するため、in situハイブリダイゼーションを、アンチセンスのLPA1リボプローブおよびLPA3 リボプローブで行った。これらの実験は、LPA1が、全てのマウスDRGニューロンにおいて発現し、一方、LPA3は小径DRGニューロンの一部で発現することを明らかにした。LPA3が、Mrgprdと共発現しているかどうかを特定するため、二重蛍光(fluorescent double)のin situ ハイブリダイゼーションを、アンチセンスのMrgprdリボプローブおよびLPA3リボプローブで、以前に公表された方法(Zylkaら、2003)を使用して行った。当該実験は、全てのMrgprd+ ニューロンがLPA3を発現することを明らかにした。逆に、ほぼ全てのLPA3+細胞は、Mrgprdを発現していた(LPA3+ のみを発現する少数の細胞があったが)。要約すると、全てのDRGニューロンは、LPA1を発現しており、一方、Mrgprd+ ニューロンは、LPA1およびLPA3を共発現している。これらのデータは、全てのDRGニューロンが、LPA受容体を介して信号を送る可能性を有することを示唆する。Mrgprd+ ニューロンはまた、PAPを発現するため(表2を参照)、LPA受容体の情報伝達は、PAPタンパク質レベルを増加および減少させることによって調節できる。]
[0117] (実施例6)
(溶液中のPAP活性の測定のための定量的蛍光定量アッセイ)
PAP活性を定量化する方法は、再現性のある量の、活性なPAPタンパク質を培養細胞に添加し、または、下記の実験のために生きたマウスに注入できるようにするために必要だった。これを達成するため、2つのよく確立された方法を、PAP活性を測定するために試験した:1)パラ−ニトロフェニルリン酸エステル(p−NPP)の加水分解を使用する比色分析;および2)ジフルオロ−4−メチルウンベリフェリルリン酸エステル(DiFMUP)の加水分解を使用する蛍光定量アッセイ(EnzChek Acid Phosphatase kit(インビトロジェン(米国、カリフォルニア州、カールズバッド)製)のように市販されている)。直接的な比較に基づき、蛍光定量アッセイは、PAP活性の定量化のためには、p−NPPよりもずっと感度がよいことを特定した。精製されたウシPAP(bPAP、分泌型アイソフォーム)およびマウス PAP(mPAP)についての代表的なデータは、図3に示される。PAPホスファターゼ活性は、L−酒石酸塩(よく特徴付けられたPAP阻害剤)によって阻害される(OstrowskiおよびKuciel、1994)。重要なことには、このアッセイは、標準曲線を作成することによって、酵素活性(ユニット/mg タンパク質)を特定するために使用できる。従って、当該蛍光定量アッセイは、純粋なPAPタンパク質および細胞可溶化物からのPAPのホスファターゼ活性を定量化するために使用できる。] 図3
[0118] (実施例7)
(ウシPAPは、LPAを脱リン酸化し、LPAに誘起された情報伝達を阻害する)
以前の研究は、ヒト PAPが、試験管中でLPAを脱リン酸化することを見出した(HiroyamaおよびTakenawa、1999;Tanakaら、2004)。脱リン酸化されたLPAは、LPA受容体をもはや活性化できないと仮定されるが、これは、より生物学的に有意義な、細胞ベースのアッセイを使用して、正式に示されたことがなかった。PAPが、LPAを不活性化させることを証明するため、1μm LPAを、過剰な(0.2mU)ウシ PAPと、試験管中で1.5時間、37℃でインキュベーションした(図4中の「a」)。平行して、1μm LPA(bPAPは含まない)を含む第2の試験管を、1.5時間、37℃でインキュベーションした(図4中の「b」)。Rat1細胞に、カルシウム感受性色素Fura2−アセトキシメチル(AM)エステルを添加し(Dongら、2001)、(LPA+bPAP)を、これらの細胞に1分間かけて投与した(図4中の「a」を参照)。短い洗い流し時間の後、(LPA)を細胞に1分間かけて投与した(図4中の「b」を参照)。図4において見出すことができる通り、細胞内カルシウムレベルは、Rat1 細胞をLPA+bPAPで刺激した場合、あまり変化しなかった。しかし、細胞内カルシウムレベルは、これらの同様の細胞をLPAで刺激した場合に、劇的に変化した。これらのデータは、bPAPが、LPAを脱リン酸化し、かつ、不活性化することを明白に示す。このような不活性化は、LPAに誘起された情報伝達を効果的に阻害する。bPAPおよびhPAPは、市販されているため(シグマ、米国、ミズーリ州、セントルイス)、これらの純粋なタンパク質を、非遺伝的アプローチで、下記の実験においてPAP活性を増加させるために使用した。] 図4
[0119] (実施例8)
(mPAPは、Rat1線維芽細胞におけるLPAに誘起されたカルシウムの反応を急激に減少させる)
外因性bPAPは、LPAに誘起された情報伝達を遮断できるため、LPAに誘起された情報伝達を、PAPを過剰発現するRat1細胞において急激に減少させることができる、と仮定した。この仮説を検証するため、黄色蛍光タンパク質VenusをTM−PAPのC末端に融合することによって、蛍光で標識したmPAPコンストラクトを作製した(Nagaiら、2002)。これによって、PAP−Venusを形質移入された生細胞を直接的に視覚化することができた。PAP−Venusがホスファターゼ活性を有することを、FRAP組織化学を使用して、形質移入された細胞の染色によって示した。次いで、触媒的に活性な融合コンストラクトを、Rat1 細胞に形質移入し、細胞内カルシウムにおけるLPAに誘起された変化を、カルシウム感受性色素Fura2−AMで測定した。図5において見出すことができる通り、LPAに誘起されたカルシウム反応の振幅および持続時間は、PAP−Venusを形質移入された細胞において、形質移入されていない細胞と比較して急激に減少する。これは、マウスPAPは、細胞ベースの条件におけるLPAに誘起された情報伝達を急激に減少させることを示す。これらの発見は、公表された結果と合わせて、マウス、乳牛およびヒトのPAPが、LPAを脱リン酸化することを示す。これは、PAPについての高度に保存された機能を示唆する。] 図5
[0120] (実施例9)
(LPA反応は、PAPホスファターゼ活性に依存する)
PAPが、LPAの脱リン酸化によって、LPA情報伝達を調節するという仮説を裏付けるため、ホスファターゼデッドのマウスPAP発現コンストラクト(PAP変異体)を、活性部位残基ヒスチジン12をアラニンに変異させ、次いで、蛍光タンパク質VenusをC末端に融合させること(このPAP変異体を形質移入された細胞の視覚化を可能にするため)によって開発した。第1に、野生型PAP−Venusと同程度に効率的に、PAP変異コンストラクトが発現し、膜に局在していることを確かめた。第2に、フッ化物抵抗性酸性ホスファターゼ(FRAP)組織化学を使用し、PAP変異コンストラクトにホスファターゼ活性が欠けていることを確かめた。次いで、Rat1線維芽細胞を、PAPまたはPAP変異体で形質移入し、細胞にカルシウム感受性色素Fura2−AMを添加した。次いで、細胞を100nM LPAで刺激した。PAPを形質移入された細胞について、形質移入されていない細胞と、同一の視野で、カルシウムの反応を比較した。図6Aおよび図6Cにおいて見出すことができる通り、LPAに誘起されたカルシウム反応は、PAPを形質移入された細胞で顕著に減少し、図5に示した結果を再現した。対照的に、LPAに誘起されたカルシウムの反応は、ホスファターゼデッドのPAP変異体を形質移入された細胞においては変化しなかった。図6Bおよび図6Dを参照。これらの結果は、図6Aおよび図6Cに示される、PAPを形質移入された細胞における減少したLPA反応が、PAPホスファターゼ活性に依存することを示す。] 図5 図6A 図6B 図6C 図6D
[0121] (実施例10)
(疼痛治療のためのPAPの使用)
異常な量のLPAは、侵害受容システムを刺激し、神経因性疼痛(アロディニアおよび痛覚過敏を含む)を惹起する。図7を参照。神経因性疼痛は、LPAホスファターゼ活性を増加させることによって治療できるだろう(図7)。本願明細書に記載されたデータは、PAPが、LPAを分解し、かつLPAに誘起された情報伝達を低下させることができることを示す。従って、PAP注入は、神経因性疼痛に関連する、いくつかの細胞型(ニューロン、ミクログリア細胞、シュワン細胞)におけるLPAに誘起された情報伝達を制御でき、さらなる効果(シュワン細胞におけるLPAに誘起された情報伝達の遮断および脱髄の遮断など)を有する。これらの可能性は、((Zylkaら、2005)において行われたように)電子顕微鏡観察を使用して坐骨神経をイメージングし、次いで、対照および処置された動物におけるミエリンの厚さを測定することによって検証できる。] 図7
[0122] さらに、PAP発現およびFRAP活性は、神経損傷後、下方制御される。従って、神経損傷後のPAPの注入は、神経因性疼痛の維持段階の間、PAP活性を回復し、アロディニアを減少させることができる。図8を参照。神経因性疼痛は、脊髄におけるLPA濃度の低下、および慢性疼痛状態の惹起または維持の遮断によって治療できる。高濃度のLPAを低下させる1つの方法は、神経損傷の前または後に、脊髄への純粋なPAPタンパク質の直接的な注入(髄腔内注入)によるものである。図8を参照。脊髄へのPAPタンパク質の大量瞬時投与によって、PAPは、損傷後に放出されるLPAを分解できる。これは、LPA受容体の情報伝達を効果的に阻害し、神経損傷後のマウスの熱感作および機械的感作を遮断する。あるいは、PAPは、静脈内に注入でき、または(筋肉内注入またはミニポンプを介して)神経損傷の部位に直接的に送達できる。侵害受容システムにおけるPAPの増加のためのさらなる方法としては、PAP作動薬の投与、および遺伝子治療または幹細胞のアプローチを使用したPAPの投与が挙げられる。図9を参照。] 図8 図9
[0123] (実施例11)
(in vivoにおけるアロディニアおよび痛覚過敏のPAP阻害)
(用量の選択)
髄腔内(i.t.)への初回量100mUのPAPは、1μmolの蛍光定量用基質が、1分間あたり1UのウシPAPによって分解されるという発見に基づいて選択した。bPAPは、LPAと同程度に効率的に蛍光定量用基質を加水分解すると仮定すると、これは、1μmolの加水分解されたLPA/U bPAP/分の速度と等しい。LPA(1nmol、髄腔内)は、神経損傷後に見られるものと大きさが等しい、行動性アロディニアおよび痛覚過敏を引き起こした(Inoueら、2004)。同様の量のLPAが、神経損傷後に、血小板によって放出されると仮定すると、1分間に1nmolのLPAを分解するために、1mUのbPAPが必要とされるだろう。従って、100mUの用量のPAPは、100倍の過剰を意味し、CSFおよび脊髄実質における、拡散および希釈を説明する。]
[0124] 直接的な腰椎穿刺法は、0.9%生理食塩水中に溶解させた、5μLの約100mUのPAP(シグマ、米国、ミズーリ州、セントルイス)を、マウス脊髄の腰椎の第5領域と第6領域との間に、髄腔内(i.t.)注入するために使用された(Fairbanks、2003)。PAPタンパク質が、腹腔内に注入した場合、脊髄組織に到達しそうにないため、髄腔内注入を選択した。ウシ血清アルブミンを、シグマ(米国、ミズーリ州、セントルイス、カタログ番号 P8361、ピキア・パストリス中で発現したもの、>4000 U/mg タンパク質)から購入した。硫酸モルヒネ(シグマ、米国、ミズーリ州、セントルイス、カタログ番号 M8777)を、0.9% 生理食塩水で希釈した。]
[0125] bPAPまたはhPAPの髄腔内注入は、明白な副作用を有していなかった。例えば、麻痺、筋力低下、嗜眠、興奮性、感染または死亡は、行動試験の期間の持続時間(いくつかの場合では最大14日間)において認められなかった。PAPタンパク質は、脊髄の細胞外(PAP+ニューロンの軸索上)に位置するため、bPAPおよびhPAPタンパク質はin vivoにおける耐性が良好であることが予期された。さらに、PAPは、CNS(すなわち、血液脳関門の後ろ)に注入され、CNSは免疫特権を持つため、免疫応答はありそうもないと考えられた。免疫およびミクログリアの活性化の信号は、分子マーカーを使用してモニターできる。]
[0126] PAP活性はまた、プラスミドもしくはウイルスの伝達、またはPAPの分泌型アイソフォームを過剰発現する細胞株の注入などによる、さらなる方法を使用して、増加させることができる。]
[0127] PAPは、熱変性、DEPC治療、または組み換えタンパク質への、触媒的に不活性な点変異(His12→Ala)の導入によって、不活性化できる。]
[0128] (bPAPは、in vivoでLPAに誘起された感作を阻害する)
ウシPAPタンパク質(bPAP)(シグマ(米国、ミズーリ州、セントルイス)から購入した)が、髄腔内に注入された場合に、無毒性であることを証明するため、かつ、bPAPが、LPAに誘起された情報伝達をin vivoで調節できることを証明するため、4群の野生型C57BL/6オスマウスに、下記を(髄腔内)注入した:1)媒体、2)20μU bPAP、3)1nmol LPA、または4)1nmol LPA+20μU bPAP。20μU bPAPは、37℃で、10分間インキュベーションした場合、1nmol LPAを脱リン酸化できることを見出した。従って、全ての試料を、37℃で10分間で、注入の前にインキュベーションした。]
[0129] 第1に、機械的感受性は、電気的von Frey装置(IITC)で測定した。次いで、熱感受性を、Hargreaves法(後肢の放射加熱;IITC Plantar Test Apparatus)を使用して測定した。図10において見出すことができる通り、1nmolLPAは、持続性の機械的アロディニアおよび熱痛覚過敏を、以前に報告された通り(Inoueら、2004)に引き起こした。1nmol LPAを、bPAPとともに10分間、37℃でインキュベーションしてから注入した場合、LPAに対する行動性感作は認められなかった。原則として、図10中のデータは、bPAPが、LPAを分解でき、LPAに誘起された情報伝達をin vivoで阻害できることを示す。驚いたことに、熱感受性は、媒体を注入されたマウスと比較して、bPAPを注入されたマウスにおいて、3日間顕著に増加したことが見出された。図10Bを参照。] 図10 図10B
[0130] 熱感受性におけるこの有意な増加を、さらに媒体を注入されたマウスおよびbPAPを注入されたマウスで再現した。これらの同様の動物における機械的感受性は、溶媒対照と比較した場合、有意差がなかった(6時間の時点を除く)。これらの発見は、bPAPが鎮痛特性をin vivoで有することを示す。]
[0131] 有意な熱鎮痛は、LPA+bPAPを注入されたマウスにおいて認められなかった(1日目の時点を除く)。LPA+bPAPを注入されたマウスと、bPAPを注入されたマウスとの間のこの相違は、注入の前のLPAの不完全な脱リン酸化による可能性があり、または、LPA+bPAPの試料におけるモノグリセリドおよび無機リン酸の存在による可能性がある(LPAの脱リン酸化は、モノグリセリドおよび無機リン酸を産生する)。体重は、全実験期間にわたって安定しており、食欲の減少または感染がないことを示していた。全体的に見て、これらの実験は、bPAPの髄腔内注入が無毒性であり、マウスにおいて耐容性が良好であることを示す。]
[0132] (bPAPおよびhPAPは、in vivoにおいて鎮痛性である)
PAPについて疼痛に関連する機能を特定するため、ウシbPAPを野生型マウスの脊髄に注入した。次いで、注入前および注入後5日まで、Hargreave法(後肢の放射加熱)を使用し、熱感受性についてこれらのマウスを試験し、電気的von Frey装置を使用し、機械的感受性についてこれらのマウスを試験した。bPAPを注入したマウスは、媒体を注入された対照と比較して、有意に増加した、熱刺激からの後肢の退避潜時を最大3日間示した。図11Aを参照し、点線を実線と比較すること。対照的に、機械的感受性においては、有意差がなかった(6時間の時点を除く)。図11Bを参照。図11Aおよび図11Bにおけるデータは、図10Aおよび図10Bから得て、hPAP行動性の結果との比較を容易にするために再度プロットしたことに注意すること。当該データは、bPAP注入が麻痺または嗜眠を引き起こさなかったという事実と合わせると、PAPが鎮痛性であり、麻痺性または催眠性ではないことを強く示唆する。さらに、ヒト hPAPの髄腔内注入もまた、注入後3日間、有意な熱鎮痛を引き起こすが、機械的鎮痛は引き起こさない。図11Cおよび図11Dを参照。hPAPの調製物を、注入前に0.9%生理食塩水で透析し、そのため、この鎮痛効果は、タンパク質調製物中の小分子の混入物によるものではないようだった。さらに、ウシおよびヒトのPAPが、同様の鎮痛効果を、同様の持続時間で生じさせたという事実は、この効果がPAPに特異的であることをさらに示唆する。ウシ血清アルブミン(BSA)を注入した場合、鎮痛は認められなかった。図11Cおよび図11Dを参照。BSAは、分子量がPAPと似ているが、ホスファターゼ活性を欠いているタンパク質である。さらに、熱感受性または機械的感受性の変化は、異なる分泌型ホスファターゼ、すなわち、ウシアルカリホスファターゼの髄腔内注入後には認められなかった。図12Aおよび図12Dを参照。] 図10A 図10B 図11A 図11B 図11C 図11D 図12A 図12D
[0133] PAP触媒活性が、鎮痛効果に必要とされるかどうかを直接的に検証するため、活性なhPAPおよび熱失活したhPAPを使用した。図13は、5μLの活性なhPAP(実線)または不活性なhPAP(点線)の髄腔内注入後6日間の、10匹の野生型C57BL/6オスマウスの平均的な熱感受性を示す。活性なhPAPの抗侵害受容性効果は、用量依存的だった。図14A−14Cを参照。図15は、5μLの活性なhPAP(実線)または不活性なhPAP(点線)の髄腔内注入後6日間の、10匹の野生型C57BL/6 オスマウスの平均的な機械的感受性を示す。ここでも、ヒト hPAPの髄腔内注入は、注入後3日間、有意な熱鎮痛を引き起こしたが、機械的鎮痛を引き起こさなかった。] 図13 図14A 図15
[0134] 次に、PAPの抗侵害受容を、一般的に使用されるオピオイド鎮痛薬であるモルヒネと、有害な熱刺激に対する感受性についての同様の行動アッセイを使用して比較した。モルヒネの抗侵害受容の用量依存性は、図16A−16Cに示される。図14A−14Cにおけるデータを、図16A−16Cにおけるデータと比較すると、PAPおよびモルヒネの抗侵害受容は、単回の髄腔内注入後の振幅が似ているように思われるが(それぞれ、40.8%±3.3% 対 62.2%±9.9%、最も高い用量での、ベースラインよりも上における増加)、PAP抗侵害受容は、モルヒネよりもずっと長く持続した(それぞれ、最も高い用量において、3日間 対 5時間)。以前の報告は、同様の高用量のモルヒネ(50μg、髄腔内、単回注入)が、マウスにおいて、4.6±1.0時間持続したことを見出した(Grantら、1995)。] 図14A 図16A
[0135] (完全フロイントアジュバント(CFA)炎症痛モデル)
完全フロイントアジュバント(CFA)炎症痛モデルを、PAPが慢性的な機械的炎症痛および熱炎症痛を逆転できるかどうかを特定するために使用した。成体(2−3ヶ月齢)の、月齢をマッチさせ、体重をマッチさせたオスのC57BL/6マウスのベースラインの機械的感受性を、無毛皮膚(右後肢)を電気的von Frey装置(IITC)で調査することによって定量化した。Hargreave法(これは、後肢の放射加熱(IITC Plantar Test Apparatus)を必要とする)を、同じ群のマウスにおける熱感受性を試験するために使用した(Hargreavesら、1988)。ベースラインの熱感受性および機械的感受性を、試験化合物の注入の前に特定した。次いで、マウスに、20μL CFAを注入した。1日後、全てのマウスは、CFAを注入された後肢において、深刻な熱過敏症および機械的過敏症を示した。次いで、マウスの半数に、1.3mg/mLのBSA(対照)を髄腔内注入し、残りの半分にはbPAPを注入し(図17Aおよび図17Bを参照)、または、半数に活性なhPAPを、半数に不活性なhPAPを注入した。図18および図19を参照。次いで、マウスを、注入から最大7日後まで、von FreyおよびHargreaves試験を使用して、機械的感受性および熱感受性について試験した。平均的な感受性をプロットし、統計検定(対応t検定)を、PAPが、過敏症(アロディニア;痛覚過敏)、感受性低下(鎮痛)を引き起こすかどうか、または効果がないかどうかを特定するために使用した。] 図17A 図17B 図18 図19
[0136] 明らかに、bPAPは、熱的刺激および機械的刺激によって引き起こされた炎症痛を顕著に逆転させた。図17Aおよび図17Bを参照。同様の効果は、活性なhPAPの注入についても認められた。図18および図19を参照。この鎮痛効果は、少なくとも3日間続いた。これは、単回用量のPAPは、マウスがほぼ完全に回復する状態まで、慢性疼痛を治療できることを示す。] 図17A 図17B 図18 図19
[0137] (神経因性疼痛のPAP治療)
PAPタンパク質の髄腔内注入が、神経因性疼痛の維持を遮断できる程度を特定した。神経因性疼痛の惹起の遮断と、神経因性疼痛の維持の遮断との間の主な相違は、PAPが神経部分損傷(SNI)手術に関連していつ注入されたか、ということと関連する。図8を参照。神経損傷前のPAPの注入によって、神経因性疼痛の惹起の遮断における有効性を測り、一方、損傷から4−5日後のPAPの注入によって、維持された疼痛の遮断における有効性を検証した。末梢神経損傷は、症候および薬物に対する反応性の観点から、ヒト 神経因性疼痛の最も近いモデルとなるため、SNI モデルを使用した(Abdiら、1998;LaBudaおよびLittle、2005)。] 図8
权利要求:

請求項1
治療的有効量のPAP、またはその活性な変異体、断片もしくは誘導体、あるいは治療的有効量の活性増強PAP修飾因子を含む組成物または医薬製剤を投与することによって、動物における疼痛を治療するための方法。
請求項2
前記疼痛は、下記のうち1つ以上によって特徴付けられる請求項1記載の方法:慢性疼痛、慢性炎症痛、神経因性疼痛、慢性神経因性疼痛、アロディニア、痛覚過敏、神経損傷、外傷、組織損傷、炎症、癌、ウイルス感染、帯状疱疹、糖尿病性神経障害、変形性関節症、熱傷、関節痛、腰痛、内臓痛、片頭痛、群発性頭痛、頭痛、線維筋痛症または分娩に関連する疼痛。
請求項3
過剰量のリゾホスファチジン酸によって少なくとも一部が特徴付けられる障害について動物を治療する方法であって、前記動物に、治療的有効量のPAP、またはその活性な変異体、断片もしくは誘導体、あるいは治療的有効量の活性増強PAP修飾因子を含む、組成物または医薬製剤を投与する工程を含む方法。
請求項4
アデノシンまたはアデノシン受容体の機能における欠損によって少なくとも一部が特徴付けられる障害について動物を治療する方法であって、前記動物に、治療的有効量のPAP、またはその活性な変異体、断片もしくは誘導体、あるいは治療的有効量の活性増強PAP修飾因子を含む、組成物または医薬製剤を投与する工程を含む方法。
請求項5
前記動物はヒトである請求項1、3または4いずれか1項に記載の方法。
請求項6
前記PAPは、ヒトPAP、ウシPAP、ラットPAPおよびマウスPAP、ならびにそれらの活性な断片、変異体および誘導体からなる群から選択される請求項1、3または4いずれか1項に記載の方法。
請求項7
前記PAPまたはその活性な変異体、断片もしくは誘導体は、下記のうち1つ以上からなる群から選択される1つ以上の修飾を含む請求項1、3または4いずれか1項に記載の方法:保存的アミノ酸置換;非天然アミノ酸置換、D−またはD,L−ラセミ混合物異性体型アミノ酸置換、アミノ酸化学置換、カルボキシ末端修飾またはアミノ末端修飾、生体適合性の分子(脂肪酸およびPEGを含むがこれらに限定されない)への結合、および生体適合性の支持構造(アガロース、セファロースおよびナノ粒子を含むがこれらに限定されない)への結合。
請求項8
前記PAPは、組み換え法によって得られる請求項1、3または4いずれか1項に記載の方法。
請求項9
前記PAP、またはその活性な変異体、断片もしくは誘導体、あるいは前記PAPの活性増強修飾因子は、注入、経口投与、外科的な埋め込み型のポンプ、幹細胞、ウイルス遺伝子療法およびネイキッドDNA遺伝子治療のうち1つ以上を介して投与される請求項1、3または4いずれか1項に記載の方法。
請求項10
前記投与は、静脈内注入、硬膜外注入、または髄腔内注入を介する請求項9記載の方法。
請求項11
前記投与は、PAPを発現している胚性幹細胞の髄腔内注入を介する請求項10記載の方法。
請求項12
前記投与は、3日に約1回の髄腔内注入による請求項10記載の方法。
請求項13
前記投与は、アデノシン、アデノシン一リン酸(AMP)、AMP類似体、アデノシンキナーゼ阻害剤、5’−アミノ−5’−デオキシアデノシン、5−ヨードツベルシジン、アデノシンデアミナーゼ阻害剤、2’−デオキシコホルマイシン、ヌクレオシド輸送体阻害剤、ジピリダモールのうち1つ以上と組み合わされる請求項9記載の方法。
請求項14
前記投与は、1つ以上の公知の鎮痛薬と組み合わされる請求項9記載の方法。
請求項15
前記公知の鎮痛薬はオピエートである請求項14記載の方法。
請求項16
前記投与は、PAPまたはその活性な変異体もしくは断片をコードする核酸配列を含む、レトロウイルス、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスのベクター移入カセットを使用したウイルス遺伝子療法を介している請求項9記載の方法。
請求項17
動物における嚢胞性線維症を治療する方法であって、前記方法は、前記動物に、治療的有効量のPAP、またはその活性な変異体、断片もしくは誘導体、あるいは治療的有効量の活性増強PAP修飾因子を含む、組成物または医薬製剤を投与する工程を含む方法。
請求項18
前記投与は、肺中のエアロゾル化による請求項17記載の方法。
請求項19
アデノシンまたはアデノシン受容体の機能における欠損によって少なくとも一部が特徴付けられる障害を有する動物の肺におけるアデノシンのレベルを増加させる方法であって、前記方法は、前記動物に、治療的有効量のPAP、またはその活性な変異体、断片もしくは誘導体、あるいは治療的有効量の活性増強PAP修飾因子を含む、組成物または医薬製剤を投与する工程を含む。
請求項20
単離されたPAPペプチドであって、前記ペプチドは、ヒトPAP、乳牛PAP、ラットPAPおよびマウスPAP、ならびにそれらの活性な断片、変異体、および誘導体からなる群から選択されるペプチド。
請求項21
請求項20記載のPAPペプチドをコードする単離されたヌクレオチド配列。
請求項22
請求項21記載のヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
請求項23
請求項22記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
請求項24
請求項20記載のペプチドを含む組成物であって、前記組成物は、動物への投与のため、またはヒトへの投与のための医薬製剤として調製される組成物。
請求項25
候補小分子の存在および不存在下でのPAP活性を測定し、前記PAP活性の増加または減少を引き起こす候補小分子をPAP修飾因子として同定することによる、PAP活性の小分子修飾因子についてのスクリーニングの方法。
請求項26
動物における疼痛の治療のためのキットであって、治療的有効量のPAP、またはその活性な変異体、断片もしくは誘導体を含む、組成物または医薬製剤、および局所組織へのPAPの送達のための外科的な埋め込み型のポンプ装置を含むキット。
請求項27
痛み止めに対する個体の反応を診断するための方法であって、前記個体のPAPゲノムの遺伝子座の中および周囲の、1つ以上の一塩基多型(SNP)、挿入または欠損を同定する工程、ならびに前記SNPを前記痛み止めに対する所定の反応と関連付ける工程を含む方法。
請求項28
疼痛に対する個体の閾値を診断するための方法であって、前記個体のPAPゲノムの遺伝子座の中および周囲の1つ以上の一塩基多型(SNP)、挿入または欠損を同定する工程、ならびに前記SNPを疼痛についての所定の閾値と関連付ける工程を含む方法。
請求項29
急性疼痛から慢性疼痛への移行に対する個体の傾向を診断するための方法であって、前記個体のPAPゲノムの遺伝子座の中および周囲の1つ以上の一塩基多型(SNP)、挿入または欠損を同定する工程、ならびに前記SNPを疼痛についての所定の閾値と関連付ける工程を含む方法。
請求項30
痛み止めに対する個体の反応を診断するための方法であって、前記個体および対照集団におけるPAP発現の相違を関連付ける工程、ならびに差次的な発現の程度を疼痛の薬物療法に対する所定の反応と関連付ける工程を含む方法。
請求項31
疼痛に対する個体の閾値を診断するための方法であって、前記個体および対照集団におけるPAP発現の相違を関連付ける工程、ならびに差次的な発現の程度を疼痛についての所定の閾値と関連付ける工程を含む方法。
請求項32
急性疼痛から慢性疼痛への移行についての個体の傾向を診断するための方法であって、前記個体および対照集団におけるPAP発現の相違を関連付ける工程、ならびに差次的な発現の程度を、急性疼痛から慢性疼痛への移行に対する傾向と関連付ける工程を含む方法。
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